28話/嵐の前の静けさ

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28話/嵐の前の静けさ

「いいの? フレム君」  作戦会議を兼ねて、サンシャイン・シティ内にあるホテルに招かれたものの。深刻な眼差しで、室内の窓辺から離れない雄にムグルが問い掛けた。  実は、ヒビキに囮を頼まれた後__。  悩まし気な表情を浮かべながらも、断る理由が見つからない事もあって。その場で「いいですよ」と了承すると、報酬代わりにあの後3体の新種から露出した黒い遺骨を貰い受けたのだ。 「遺骨の事なら、気にしなくても何とでもなるのに……。軍と手を組むなんて、後々苦労するだけだよ?」 「分かってるよ。分かってるけどさ。俺を狙ってくるのはシュバルツの意思で、本能は別だろ? 見つからないしさ。正直焦ってるんだよ」 「そう言えば、大口開けられた瞬間。何もって言ってたね」 「うん、なんか違和感は感じたんだけどね」  背筋がゾッとする体験ではあるが、避けれるんじゃないかというぐらい。相手の動きがスローモーションで見えたお陰で、捜し物がないことぐらいは黙視で確認出来た。 「これからどうするつもりでいるの?」 「とりあえずボコッてみるにしても、邪魔が入ると思ってさ」 「まぁ君に直接囮を頼むぐらいだもんね」 「それにシュバルツの意識より化物(ポーン)の本能が勝ったら、俺を狙うなんてないよね?」 「それで今の内に、本命に関わりそうな軍と仲良くしておこうって訳か。ボクはいい案だと思うよ」  むしろ迷っている素振りを見せながら、先を見据えてる雄にムグルは関心した。  けどマイナス思考がやたら働く雄は、ムグルの言葉を聞いて不安を漏らす。 「でも情報をどこまで教えてくれるかな?」 「あ~、それは期待しない方が正解だね。君に教えたら出し抜かれそうだし」 「出し抜かれるって……」 「ふふっ。まぁ騙した訳じゃないしても、良いように利用されると学習してるはずだよ。何故君が、あの場所を戦場に選んだのか。気付いてる可能性もある訳だしね」  すると、現場に駆け付けてきた早さから嫌な予感がした雄は、(うヾっ)と渋い顔を浮かべてヒビキと敵対しないための新たな言い訳を考えねばと思った。 「一方的に縁を切ってもらっといて良かったね、フレム君」  そのお陰でヒビキが責められないと分かってるムグルはどこか楽し気に微笑むが、その所為で相手のガードが固くなってると察する雄の気は重かった。
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