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溜め息と共に両手で沈んだ顔を覆い。そんなタイミングで部屋にノックがかかったことからムグル応対すると、ヒビキの御使いでやってきたジークがドアの前に立っていた。
「お待たせしました。ヒビキさんが会議の前に、雄さんとお話がしたいそうです」
「おやっ。その様子じゃあ、ボクはお呼びじゃないみたいだね」
「すみません」
「構わないよ。ジーク君も大変だね」
「ムグルさんのように、察しが良い方だと助かります」
雄の保護者として、何か言われるのではないかと身構えていたジークだが、すんなり部屋の奥にいた雄が顔を出してくれたので安堵した。
「行ってくるよ」
「部屋で待ってるね」
「うん」
けど雄を見送った後、室内に戻る前に不審な様子を伺わせる三人組に気が付いたムグルは、部屋に戻る前に呼び止める。
「リョーイチ君、キョウ君、コヅキちゃん。盗み聞きは諦めといた方が得策だよ」
「え~っ!」
「ムグルは気にならないのかよ」
「心配にならないのか?」
雄を呼び出したのは、ヒビキであると分かってる三人は、快く見送ったムグルに不満の声を上げると、ひとまずジークの後を追うのを止め。通路の曲がり角で尾行に気付いた雄に手を振られた事から大人しく見送った。
「直ぐに帰ってくるよ」
「どうしてそう言い切だよっ」
「何か策でもあるのか?」
「教えて、教えて♪」
「そう言う訳じゃないんだけど……。囮として最前線に立つボク等の護衛をするつもりなら、今の内に準備を整えておくようにね」
そこで目をパチクリさせたコヅキだが、よく考えてみれば今回の雇い主がヒビキではないことに気が付く。
「そっか。私、ムグルさんと行けるんだ」
「じゃあオレ達も__」
「雄と一緒に?」
「仕事を解約するつもりなら別だけどね」
すると首を横に大きく左右に振った三人は、最前線に行けるならと慌ただしくムグルの前から立ち去って行った。
そして、隣部屋で聞き耳を立てていたイヌカイに気付いたムグルは、部屋へと戻る前に「ご苦労様です」と声を掛けてからドアを閉めた。__と言うのも、最前線にリョーイチやキョウ、コヅキが参戦するということは、もれなくイヌカイにお目付け役が言い渡されるからである。
「勘弁してくれよ、もぉ~」
イヌカイは隣部屋のドアの前で、べそをかきながら膝を付いた。
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