28話/嵐の前の静けさ

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▼▽▼▽▼▽  その頃、本命に精神体で潜入しているシュバルツは危機感を覚えていた。  暗く淀んだ闇の中で、肉体を置いてきたにも関わらず小さく震える左手。痛みは感じないものの。魂が傷付き始め、化物(ポーン)の本能を抑制しきれなくなっているのが分かる。 「__後悔はしてないはずなんだけどな」  小刻みに震える左手を握り締める一方で、形成される因果の鎖が分厚い壁の一部となり、全く目的の代物が見えなくなった現場を見上げて溜め息を吐いた。 「願いもしてないのに、叶えようとすんなよ。はた迷惑にも程があるぜ?」  でも生きている以上、死ぬ寸前は怖いものだ。どんなに理由を言い聞かせても、覚悟を決めても、それが最善の選択なのか分からないのだから……。 「俺は、守りたい奴を殺してまで生きる事を望まない。ましてや他人の命を奪ってまで、長らいたいとは思えない質なんでね」  すると、錆び付いた歯車の音に紛れる不快な奇声が耳に触る。相手を知るシュバルツは、因果の鎖まみれとなった先を見据えて「まぁ、そう怒んなよ」と言って失笑した。 「俺が綺麗事を抜かしてるのは事実だが、お前が叶えてんのは生き物としての本能であって、望みと言えんのか? 生きたいと望むのも理由があってこそだろ」  しかし、言葉を持たないモノは何も返さなかった。ただ生存本能から、飢えという苦しみをどうにかしようとしているのは分かる。 「阻止出来るのは、次が最期かもな」  暗闇の中、シュバルツを取り囲むよに浮かぶ多くの白い仮面。飢えを晴らすために化物(ポーン)を襲わせていたが、血肉とは違う物質のためか飢えを凌げなかった。  おまけに大分放出したのにも関わらず、減った気がしないのは、飢えを凌げないと分かっていながらも化物(ポーン)を襲うようシュバルツが仕向け続けているからである。 「早く仕留めに来いよ、フレム」  しかし、この後__。  予想だにしなかった事態が起きる。 ▽▼▽▼▽▼▽▼▽    
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