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その頃、本命に精神体で潜入しているシュバルツは危機感を覚えていた。
暗く淀んだ闇の中で、肉体を置いてきたにも関わらず小さく震える左手。痛みは感じないものの。魂が傷付き始め、化物の本能を抑制しきれなくなっているのが分かる。
「__後悔はしてないはずなんだけどな」
小刻みに震える左手を握り締める一方で、形成される因果の鎖が分厚い壁の一部となり、全く目的の代物が見えなくなった現場を見上げて溜め息を吐いた。
「願いもしてないのに、叶えようとすんなよ。はた迷惑にも程があるぜ?」
でも生きている以上、死ぬ寸前は怖いものだ。どんなに理由を言い聞かせても、覚悟を決めても、それが最善の選択なのか分からないのだから……。
「俺は、守りたい奴を殺してまで生きる事を望まない。ましてや他人の命を奪ってまで、長らいたいとは思えない質なんでね」
すると、錆び付いた歯車の音に紛れる不快な奇声が耳に触る。相手を知るシュバルツは、因果の鎖まみれとなった先を見据えて「まぁ、そう怒んなよ」と言って失笑した。
「俺が綺麗事を抜かしてるのは事実だが、お前が叶えてんのは生き物としての本能であって、望みと言えんのか? 生きたいと望むのも理由があってこそだろ」
しかし、言葉を持たないモノは何も返さなかった。ただ生存本能から、飢えという苦しみをどうにかしようとしているのは分かる。
「阻止出来るのは、次が最期かもな」
暗闇の中、シュバルツを取り囲むよに浮かぶ多くの白い仮面。飢えを晴らすために化物を襲わせていたが、血肉とは違う物質のためか飢えを凌げなかった。
おまけに大分放出したのにも関わらず、減った気がしないのは、飢えを凌げないと分かっていながらも化物を襲うようシュバルツが仕向け続けているからである。
「早く仕留めに来いよ、フレム」
しかし、この後__。
予想だにしなかった事態が起きる。
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