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「ヒビキさん! 本命が出現しました!!」
それは軍司令官として、作戦の最終調整再を行っている時だった。ノックも無しに血相を変えて執務室に入ってきたイヌカイの報告に、一瞬驚愕な表情を浮かべたヒビキは、厳しい表情で問う。
「場所は?」
「新宿です。臨戦態勢が整った直前に出現したようで、既に戦地と化しています」
「__今すぐ出るぞ!」
雄との約束が頭を過ったが、予想外の出現の早さに現地がパニックになっている事を察したヒビキは、イヌカイを連れて出陣。
一方シュバルツ魔力に気付いた雄とムグルは、ヒビキとの約束をどうするべきか。ホテルの窓から外の様子を伺いながら、最善策を練っていた。
「事態がより深刻になってきたね」
「嫌な予感はしてたんだ」
シュバルツと同属性の魔法を扱える雄は、ヒビキを助けるようメッセージを残した理由に気付きつつあった。
まだ確信を得ていないにしても、時の民にして死神の血筋を引くシュバルツは、死神の瞳と呼ばれる特殊能力を僅かながらも引き継いでいることから。他者の身の危険の程度を首回りで判断する事が出来る。
逆に死神の血筋でもない雄は、加護の一端として、同じように他者の身の危険の程度を知る術をもっているのだが__。
「昨日忠告しても、ヒビキさんの死期は変わりそうになかったし……。ジークの死期も見えるようになったからさ。これでリョーイチやキョウ達の死期が早まる事になれば……」
「分かってるよ。例え化け物だと罵られても、ボク達には助けなければならない義務と責任がある」
「俺達のやる事に変わりはないもんね」
けど親しくなった人達に拒絶される精神ダメージは、嫌われる事を恐れがちな雄にとって酷いもので。それを見越した上で同行しているムグルは、胸が締め付けられる思いで相槌を打った。
そして、話がまとまった頃合を見計らったようにドタバタと騒がしい気配を感じたかと思えば、最新情報を得たジークがリョーイチ達を連れてノックも無しに駆け込んで来る。
「雄さん、ムグルさん!」
「本命が出だってよ!」
「ヒビキさん達は出陣した後だ!」
「酷くない!?」
先陣を切ってやって来たのはジークだが、リョーイチ、キョウ、コヅキと立て続けに発言され。たじたじとなってしまった雄の代わりに、ムグルが「まぁまぁ落ちて」と宥めてから確信をとる。
「ジーク君がこの場に居るってことは、ある程度の事は大目に見てくれるって事かな?」
「はい、形振りなんて構っていられません!」
「それじゃボク達のとっておきの交通手段を使って、現場に直行してみようか」
「アレ使うの?」
ムグルの言うとっておきを知っている雄は、シュバルツに怒られやしないかと不安な様子で質問。けど背に腹は代えられない状況であるものの、魔法を使うのはまだ早いとばかりにウインクして見せたムグルは言う。
「使えるものは使わないとね♪」
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