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そこで、やって来たのは池袋の隠れ家近くにあった車庫だ。リョーイチとキョウは、すき焼をご馳走なった事もあって、隠れ家の場所は知っていたが__。
鍵がかかったシャッターを開けると、整備が行き届いた二輪車と普通車が管理されていたとは思いも寄らなかった。
「これ、もしかしてシュバルツさんの?」
「車は共有らしいよ」
ジークの質問にムグルが応えると、黒いヘルメットをかぶって奥から二輪車を出してきた雄がエンジンをかけた。
「リョーイチ君は、先行するフレム君の後ろに乗って」
けど体格がリョーイチより小さい雄を見て、彼の実力を知らない周囲は不安そうな顔色を浮かべた。
「マジで運転出来んのか?」
「免許は持ってるよ」
「そうじゃなくてよ」
免許を持ってるからと言って、運転が上手いとは限らない。それは下積み時代に嫌という程体験していたリョーイチは、よく知っていた。特に世話になっていたイヌカイは、かなり運転が荒い方なので好きではなかった。
しかし普通車とは言え、コヅキが助手席に乗ることを考えると、後部席に推し積めに合うこと間違いなし。溜め息混じりに腹を括ったリョーイチは、首を傾げた雄に「事故んなよ」と忠告して同乗を決意した。
「それじゃあ両手が塞がるリョーイチ君には、ボクのインカムを貸してあげるよ」
「いいのか?」
「車に予備があるはずだから気にしないで。フレム君は、携帯のGPSをONにしてよ。運転中の追跡は、キョウ君に任せるから」
「分かった。後のやり取りはインカムでやるよ」
そう言ってムグルの注文に早速応えた雄は、携帯の設定を変えて直ぐバイクに股がると、リョーイチを後ろに乗せて颯爽と走り去ってしまった。
「大丈夫かな?」
「早いとこボク等も追いかけようか」
「そうですね」
「無茶なことされる前に行くか」
見た感じ、バイクの走行は安定しているようだが、此処は化物が蔓延る東京である。急な飛び出しに雄が驚けば、ノーヘルのリョーイチはたまったもんじゃないはずである。
心配するコヅキを気遣ってムグルが提案すると、ジークとキョウが同意して、二人の行く先を携帯で一度確認してから出発した。
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