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30話/形勢逆転の波
所変わって、徒歩で新宿駅を目指していた一行は、戦場らしく銃声が耳に入るようになって緊張を走らせた。
「一時硬直状態だったんでしょうか?」
「惨状からして、軍が優先とは限らない」
「悪い予感がするわ」
ジークの疑問に、周囲の様子から顔を曇らせるキョウとコヅキ。気掛かりなのは、銃声が響いてる割には遺体が1つも無く。血が流れている様子も見受けられないところか。
「フレム君、今の内に前衛と後方支援を決めておこうか」
「というか、攻撃しても弾の無駄遣いになるだけだから。キョウとリョーイチは、俺と一緒に本命の弱体化に協力してくれないかな」
『弱体化?』
今まで仕留める事しか考えてこなかったので、雄の提案に首を傾げて問い返すリョーイチとキョウ。そこでウェストバックを漁り始めた雄が取り出したのは、白いピンポン玉にしか見えないアイテムだった。
「てってれ~♪ 閃光玉ぁ。これを相手に強く当てて、嫌がらせをします」
「あの、殺傷力は?」
「少し眩しいぐらいかな。サングラスをかけると、目標見失うから難儀だけどね」
ジークの素朴な疑問に答える雄だが、閃光玉とストレートに言ってるのだから、ある意味当然の効果である。
「俺が最初に使って見せるから、ひとまずポケットに詰めれるだけ詰めて」
「本気で言ってんのかよ」
1つ受け取って見ると、ピンポン玉にしては中身が詰まってるようで。小石を持ってるぐらいの重みは感じられた。
「それで嫌がらせが成功したら、どうするつもりでいるんだ?」
「まずは退路を確保して、ヒビキさん達を戦場から離脱させた後。嫌がらせで顔を出した本体をぶっ潰す」
「本体?」
「2回程手合わせしてみたけど、アレは恐らく擬餌だよ。化物の急所だと思って攻撃してると、痛い目をみると思うよ」
それを聞いて、顔色を悪くしたのは軍の意向を知るジークだ。どんなに姿が変わっても化物であるからには、急所は変わらないと、ジーク自身そう考えていたのだ。
「だとしたら、急がないと……。軍が壊滅状態に追い込まれてるかもしれません」
「それはマズイね。急ごう、フレム君」
「うん」
予想の範疇とは言え、実際事が起きると不安が募るもので……。雄は、シュバルツとの約束は果たしたい一心で歩を早めた。
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