30話/形勢逆転の波

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 * * * * *  一方、間一髪のところで雄の魔法壁に守られたリョーイチとキョウは、辺りの暗さに自分達がどうなったのか分からず__。 「照明(ライティング)」  雄が魔法が生み出した明かりによって、お互いの無事を確認した。 「ヒビキさん達は?」  雄は魔法が使える事を敢えて説明せず、身体を支えてくれていたキョウに尋ねた。  すると、暗い影を落としたキョウに代わってリョーイチが単刀直入に答える。 「喰われた」 「……。」 「オレ達の心配をしてくれたイヌカイも、ワケクソ分からねぇコイツに__」  認めたくない現実を目の当たりにして、どうしようもない無力感を味わいながら拳を握るリョーイチ。キョウも両手が塞がっていたとは言え、結果的に見殺しにしてしまった罪悪感に(さいな)まれているようであった。  そこで痛む身を起こした雄は、落胆する二人に不敵な笑みを浮かべて提案する。 「それじゃあ取り返しに行かなきゃだね」  一瞬何を言っているのか理解出来なかった二人だが__。左手を胸に当て、我が身に回復魔法を施した雄は、その場から立ち上がって自分の武器を拾った。 「ほ、本気で言ってんのか?」 「まだ戦えるんでしょ?」 「ヒビキさん達が生きているのか?」 「シュバルツがちゃんと仕事してたらね」  信じられない発言に半信半疑でリョーイチとキョウが交互に尋ねるが、雄は軽い口調で言ってのけた。まるで身を呈して守ってくれた、どっかの誰かさんのようである。 「そのシュバルツって奴も死んでないのか?」 「まぁね」 「何かトリックがあるみたいだな」  リョーイチの質問に応えた雄の様子から、キョウが訝しげに言うと、口角を上げた雄は一つ確認のために二人に尋ねる。 「それでも俺を信じてくれる気があるの?」  重要な事は何一つ語らない。  嘘ではなさそうだが、今まで誤魔化して節があったので不安要素はある。  それでも彼の言うこと信用しないと言う事は、目の前で呑み込まれていったヒビキ達を死んだと決めつけるようで嫌だったリョーイチとキョウは、アイコンタクトを交わして同じ答えに辿り着く。 「あぁ」 「勿論だ」 ▼▽▼▽▼▽  同じ頃、先に呑み込まれたヒビキの前に現れたのはシュバルツだった。しかし、訳あって仰向けで倒れているヒビキに触る事が出来なかったシュバルツは、ヒビキの前にしゃがみこんで声をかける。 「ヒビキ、ヒビキ」 「……っ」 「おい、ヒビキ。目ぇ覚めたか?」 「しゅ……シュバルツか?」  声から相手を判断したヒビキは、視界に入った混沌の暗闇から。自分は死んで、先に逝ったシュバルツが声をかけてくれたのだと思った。けど肝心のシュバルツの姿が見えない事から困惑していると、彼は思いもよらぬ事を言ってくる。 「もうすぐ迎えがくるから、そこで待ってろ。俺は俺がやるべき仕事をしてくる」 「やるべき仕事?」  頭が働かず、ヒビキがオウム返しで尋ねると、シュバルツは暗闇の中。返答に困った様子で「後で話す」と答えると、その場から立ち上がって忠告する。 「オマエは自分の心配しろ」  でもそれは、ヒビキがやり残した仕事を代わりにする時に言うの捨て台詞でもあった。 「迷惑かけるな」 「気にするな」  むしろ今回の件に巻き込んでしまった事を悔やむシュバルツは、魔法が使えたとしても大切な人を守りきるために雄を利用する他なかった己の無力さを痛感するのであった。 ▽▼▽▼▽▼▽▼  
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