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31話/天罰を下す時
「それじゃあ、
俺から極力離れないよう付いてね」
雄にそう言われて、真っ暗な空間をひたすら真っ直ぐ歩き続ける雄から余り離れないよう気をつけて歩くリョーイチとキョウ。
雄の手元には懐中電灯は無い。
空は墨を塗ったように真っ黒で、自分達が歩いてる場は明るいにも関わらず、雄から離れた場は、再び暗闇へと戻るように来た道が分からない程であった。
「雄、何を目印に歩いているんだ?」
本当は相手の正体を聞きたいところだが、信じると相手に伝えたこともあって。キョウは、素朴な疑問を先頭を歩く雄に尋ねた。
すると後方を一瞥した雄は、場を盛り上げようと明るく謎なぞを仕掛ける。
「ヒビキさんに預けた物だよ」
「預けた物?」
「シュバルツって奴の時計か」
「当たり♪」
余り他人の話を聞かない割には、物事を見定めいるようで。オウム返ししたキョウに代わって、リョーイチが正解を言い当てた。
「何か特別な効果でもあるのか?」
「まぁね。記憶が確かなら、シュバルツと組んでた頃。余りにも無茶するから手を加えたんだよ」
ただ雄がその事を思い出したのは、ほんの数日前の事だ。ヒビキに許可を得て、シュバルツの時計に触れた時__。
御守りとして、強い魔法が2つ備わっている事には気付いたものの。その内の1つが、シュバルツの自己犠牲精神を見抜いた俺からの嫌がらせでもあった。
▼▽▼▽▼▽
「何勝手に魔法加えてんだよ!」
「死にたがりには、これぐらいがちょうど良いんだろ」
「誰が死にたがりだって?!」
「無自覚なのが一番質が悪い」
▽▼▽▼▽▼
ふと思い出したやり取りは、何時も何処か喧嘩腰で。まるでリョーイチとキョウのようだったと、密かに雄は昔を振り返った。
「それでヒビキのオッサンが無事だと断言できんのか」
「一時的な効果ではあるけどね。手離さない限りは大丈夫だとは思うよ」
とは言え、不安は拭いきれない。
リョーイチの発言に応えた雄の話を聞いても、キョウの顔色の悪さは変わらなかった。
魔法なんて本当に実在するのか?
もし所持していなかったら?
悪い予感だけが頭を過り、雄ですらキョウのマイナス思考に気付いた頃。ようやく論より証拠とばかりに、仄かな光を指差して雄が声に出す。
「いたよ」
「え?」
目の悪いキョウにとって、雄が指差す方向は暗がりしか広がっていないが__。雄が指を鳴らして一筋の光の道を生み出すと、その先に眩しさの余り動き出した人影があった。
「義っ! ……ヒビキさん!」
思わず義兄と呼ぶところをグッと堪えて言い直したキョウは、呼び掛けに反応した相手に真っ先に駆け寄って無事を確認する。
「キョウか?」
「無事か? オッサン」
「リョーイチ?」
暗い空間いた事から、てっきり死後の世界中か何かと思っていたヒビキだが__。
リョーイチの後に視界に入った、赤服いハイネックに朱色の鉢巻がトレードマークの雄に気が付いたヒビキは、ニヤリと笑みを浮かべて声をかける。
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