31話/天罰を下す時

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{それじゃあ全体の7割から8割はボクが仕留めるよ。同士討ちにならないよう、フレム君は守りを三重にして構えといてね} 「属性は?」 {光。ちょうど雲に隠れてた太陽が出てきそうだから利用させてもらうよ} 「分かった」  そこで雄は、いそいそとウエストバックからチョークを取り出すと、曲線の十字を四ヶ所描いた間に曲線の三角形を描き。 「ヒビキさん、シュバルツ、話終わった?」 「ん? 方針決まったのか?」 「これからどうすんの?」 「ムグルが手駒の7・8割がた魔法で殲滅してくれるそうなんで。その後、俺が一撃必殺技を繰り出すまでの間。リョーイチとキョウに守って貰うことになりそうです」 「そんじゃオレ等は、その二人の保護者(かんとく)ってことか」 「お手並み拝見させてもらうよん♪」  シュバルツに続いて、余裕綽々とした態度でヒビキが発言すると、一旦雄は明かりの範囲を縮小。ぶつぶつと呪文を詠唱して、先程描いた印の範囲内に厚い結界を張った後、更に二重の結界を展開させた。 * * * * * 「準備はいい?」  ヘッドマイク越しに聞こえていた詠唱が途絶え、強化した結界から出ないよう雄が案内した頃合いを見計らってムグルが尋ね。相手の相槌が聞こえたところで漆黒の闇に沈んだ新宿を見下ろしたムグルは、気を集中させて人の気配を探った。  けど人気どころか、生気すら感じられない様子からして。魔法を目撃されたところで、誰が放ったまでは分からないだろう。  エメラルドグリーンに光輝く聖大樹(セイント・フォレスト)の太い枝に仁王立ちしたムグルは、両手を(かざ)して詠唱を始める。 「大地を照ら示し者よ 我が呼び声に応え  我が前に姿を現せ」  すると雲の隙間から零れていた光が(まばゆ)い発光と共に、暗雲を吹き飛ばして漆黒の闇に沈んだ新宿を捉え。異変を察した本体が萎縮し、漆黒の範囲を狭める。  それこそ手駒の8割を狙うムグルにとって、好機の瞬間であった。 「汝の光 拒む処あらず…。我求めるは、我が前に侵食せしめるモノへの天罰為り」  ここで本体を含めた漆黒の闇を光線の牢獄で捕らえることで、攻撃魔法の範囲を定めると、判決を下すように魔法名を口にする。 「聖光天罰(シャイニング・パニッシュメント)!!」  すると複数の光の針が無数に出現した後、定められた範囲内に容赦なく降り注ぎ。その様を見たジークとコヅキは言葉を失った。  放たれた光の針の全長は、恐らく5メートル程。遠巻きから見ると新宿が剣山に見えるが、その針を真上から浴びた本体に潜伏中の一行からすると、発射台に設置されたミサイルがまんま目の前に落ちて来るのだからたまったもんじゃない。
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