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32話/舞い降りし最強の死神
「驚いた。随分しぶといんだね」
異界で威力が落ちてることから、高位の魔法を使用したというのに__。ムグルは、漆黒の闇から聖大樹
を貫く勢いで伸びてきた黒い鎖の一本を間一髪で避けた代償としてヘッドマイクを犠牲にした。
「アレは一体何なんですか?」
「クラーケン? 海坊主?!」
「本体が傷付けられなかった原因だよ。ボク等の間じゃあ、因果の鎖なんて呼ばれてるけどね」
ムグルが漆黒の波に呑み込まれぬよう発動させた魔法。聖大樹もスカイツリーと同等の大きさを誇るものだが、ジャラジャラと音をたてながらうねる黒い鎖の塊もまた巨大なものだ。
漆黒の闇に沈んだ新宿に小山のような盛り上がりに、鎖が無数の触手代わりに動いているもんだから。コヅキがクラーケンや海坊主に例えるのも無理はない。
「足場を作るから、寄ってきた化物を片付けてくれないかな?」
「新たな魔法を使う気ですか?」
「いや。少しでもボク等が相手をすれば、内部環境が良くなるんじゃないかと思ってね」
すると理解が早いコヅキは、得物である薙刀を構えて「要は囮になれば良いのね?」と笑みを溢した。
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一方、体内で本体の核を狙う雄は、ムグルの攻撃で傷付いた防御壁を修復すると、新たな呪文詠唱。傍に控えるキョウやヒビキには理解出来ないが、異変に気付いたシュバルツが低い声で「構えろ」と忠告した数秒後。
新たな化物が地面から生えてくるようにヌッと姿を現し、先攻しているリョーイチを無視して、結界内に突如沸いた力の出処に目標を定める。
しかし、それを許さないとばかりに沸いてきた化物を撃ち壊したリョーイチは、ニヤリと悪党顔負けの面構えで言う。
「浮気してんじゃねぇよ」
そこでちょうどリロードが必要となったところで、キョウがリョーイチにまとわりつくように攻撃をしかけてきた化物を片付けた。
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