32話/舞い降りし最強の死神

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********  一方、この間も雄は焦っていた。  どんなに魔法を練り上げようとしても、気が散ってやり直しの連発。先程まで傍に控えていたキョウは、リョーイチの戦い方に見かねてフォロー行ったようだし……。いくらヒビキが手を貸してくれるは言え、無理を強いればシュバルツの魂がどうなるか分かったもんじゃないからだ。    ーーやべぇ詰んだーー  改善の手段が思いつかないまま、雑念が脳内を支配していくのが分かる。  大体共に戦い抜かなきゃいけない場面で、ぎゃあぎゃあ文句を言い合ってる場合ではないはずなのだが__。 「雄っ!」  早いとこ状況を打開したくて、結界の内側にいることから注意が疎かになった瞬間。  新手に気付いたキョウが危険を察して名を呼ぶが、雄が俯き様に唱えてた呪文を中断して正面を向いた時には遅かった。  暗闇の中から真っ直ぐに伸びた鎖付の大きなクナイが、顔面目掛けて飛んできて__。  結界に到達する前に、横槍を入れてきた人物によって勢いよく(はじ)かれる。 「もぉ、なってないね~」  黒い背中に、馬の骨を象った被り物。  一瞬死神を連想してしまうコーディネートだが、その余裕綽々な口調と声色には覚えがあったので。危機的状況から肩に力を入れていた雄は安堵した。 「護衛って言うのは、最後の砦を守ってこそ株が上がるってもんなのにね~」 「ごもっともです」  リョーイチとキョウは、結界があるなら護る必要性がないと考えたようだが、場数を踏んでるヒビキとシュバルツの考え方は違う。  何故雄がわざわざ結界を張り直したのか。  その理由を察した上で結界を含めて守るべき対象とし、シュバルツの魔法(ちから)によって出現させた大鎌を構えると、漆黒に潜む敵を見据えて言う。 「此処は監督として、カッコよく手本をみせるしかないかぁ♪」  しかし、戦闘しながら横目で様子をチラ見していたリョーイチとキョウは、そんなヒビキの発言を冷たくあしらう。 「妙なコスプレしといてよく言うぜ」 「見た目ラスボス」 「うっさいよ、そこ。集中して!」  しかし、ヒビキこそ集中力必須なんじゃないかと心配する雄だが……。  そんな(ゆる)いやりとりをしてる隙を突いて、目標を変える事なく放たれた複数の攻撃を全て弾き返すと、リョーイチとキョウが相手にしていた化物(ポーン)までヒビキが始末してしまうのだから畏れ入る。 「雄ちゃん、報酬減額しちゃいなよ」 「検討しときます」  口を尖らせて言うヒビキの提案に雄が乗ると、流石にマズイと思ったのか。離れ過ぎていた雄との間合いを縮めて、護りの陣形をとり始めるリョーイチとキョウ。  その間、シュバルツの力で前より夜目が利くようになったヒビキは、漆黒の闇に潜む異形な化物(ポーン)に注意を払いながら確認をとる。
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