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「ところで雄ちゃん。その結界は、ノーマルな化物の攻撃には耐えられる仕様なの?」
「はい」
けど魔法が万能だと勘違いされては困ると思った雄は、肯定した後に結界の弱点を暴露する。
「でも攻撃に集中すると、壁が薄くなるんで。一概に平気とは言えないですけどね」
「それで詠唱を止めちゃったのか」
「それ早く言えよ」
「結構重要な事だぞ」
「す、すいません」
てっきり護衛が必要ない程の魔法なのかと思いきや。思わぬ欠陥を知ったことで、結界ごと雄を護る必要性を理解したリョーイチとキョウは、弾数を確認してから作戦を練り直し始める。
「ヒビキさんにカバーしてもらわないとマズいな」
「俺も半分使っちまったぜ」
「じゃあ、敵がこの範囲に入るまで攻撃禁止ね」
そう言って、器用に大鎌で結界を囲むように線を引いたヒビキは、遠回しに結界の中に入ってろと二人に指示を出した。
「おい、本気で言ってのか?」
「でなきゃ首はねちゃうぞ♪」
リョーイチの不満に対し、ふざけて言い返すヒビキだが、要はシュバルツの力を制御しきれていないと言うことだ。
「笑えねぇ冗談だな」
「とばっちりで死にたくはない」
自分達が相手をしていた化物まで八裂きにしたのが紛れだと気付いて、リョーイチとキョウは真顔で雄の結界内に避難した。
「これで本気がだせそうかな? 雄ちゃん」
「まぁ、そうですね」
まるで牧羊犬のような追い込み方を見て、苦笑いを溢す雄。ただ、ここまでしてもらって失敗する訳にはいかないので。隠し持っていた愛剣を左指ぬきグローブの宝珠から出現させると、足下に突き立てて命ずる。
「我が身を守りし聖剣よ。
我が友を守る盾と成れ」
すると結界を覆うようにシールドが展開し、代わりに突き立てた剣が消えた。
「これでヒビキさんの攻撃を無効化したよ」
「さすが雄ちゃん♪ これで心置きなく殺れるよ」
『怖っ!』
軽い口調で、目は笑っているものの。
つい先程周囲の化物を全滅させたヒビキが言うと、皆殺しの中に仲間も含まれてるような言い方で悪寒が走る。
「あんまやり過ぎないようにして下さいね」
「分かってるよ」
シュバルツの容態を気にして忠告すると、ヒラリと空いた手を振って攻撃に転ずる。
人の目では確認出来ない漆黒の闇も、夜目とは別に死神の能力が備わったヒビキの瞳には、ばっちり敵の姿を捉えていた。
ーーこれがシュバルツが見てた世界ーー
相手の攻撃がスローモーションに見え、多少身体が重く感じるものの。相手より早く動けることから先手がとり易い。
その結果、不馴れなはずの大鎌でも簡単に数多くの化物を討ち取り。普段見かけないようなタイプの異形な化物を相手にしても、難なく急所目掛けて攻撃出来ることからヒビキの独壇場となった。
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