32話/舞い降りし最強の死神

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「ところで雄ちゃん。その結界は、ノーマルな化物(ポーン)の攻撃には耐えられる仕様なの?」 「はい」  けど魔法が万能だと勘違いされては困ると思った雄は、肯定した後に結界の弱点を暴露する。 「でも攻撃に集中すると、壁が薄くなるんで。一概に平気とは言えないですけどね」 「それで詠唱を止めちゃったのか」 「それ早く言えよ」 「結構重要な事だぞ」 「す、すいません」  てっきり護衛が必要ない程の魔法なのかと思いきや。思わぬ欠陥を知ったことで、結界ごと雄を護る必要性を理解したリョーイチとキョウは、弾数を確認してから作戦を練り直し始める。 「ヒビキさんにカバーしてもらわないとマズいな」 「俺も半分使っちまったぜ」 「じゃあ、敵がこの範囲に入るまで攻撃禁止ね」  そう言って、器用に大鎌で結界を囲むように(ライン)を引いたヒビキは、遠回しに結界の中に入ってろと二人に指示を出した。 「おい、本気(マジ)で言ってのか?」 「でなきゃ首はねちゃうぞ♪」  リョーイチの不満に対し、ふざけて言い返すヒビキだが、要はシュバルツの力を制御しきれていないと言うことだ。 「笑えねぇ冗談だな」 「とばっちりで死にたくはない」  自分達が相手をしていた化物(ポーン)まで八裂きにしたのが(まぐ)れだと気付いて、リョーイチとキョウは真顔で雄の結界内に避難した。 「これで本気がだせそうかな? 雄ちゃん」 「まぁ、そうですね」  まるで牧羊犬のような追い込み方を見て、苦笑いを溢す雄。ただ、ここまでしてもらって失敗する訳にはいかないので。隠し持っていた愛剣を左指ぬきグローブの宝珠から出現させると、足下に突き立てて命ずる。 「我が身を守りし聖剣よ。      我が友を守る盾と成れ」  すると結界を覆うようにシールドが展開し、代わりに突き立てた剣が消えた。 「これでヒビキさんの攻撃を無効化したよ」 「さすが雄ちゃん♪ これで心置きなく()れるよ」 『怖っ!』  軽い口調で、目は笑っているものの。  つい先程周囲の化物(ポーン)を全滅させたヒビキが言うと、皆殺しの中に仲間も含まれてるような言い方で悪寒が走る。 「あんまやり過ぎないようにして下さいね」 「分かってるよ」  シュバルツの容態を気にして忠告すると、ヒラリと空いた手を振って攻撃に転ずる。  人の目では確認出来ない漆黒の闇も、夜目とは別に死神の能力が備わったヒビキの瞳には、ばっちり敵の姿を捉えていた。  ーーこれがシュバルツが見てた世界ーー  相手の攻撃がスローモーションに見え、多少身体が重く感じるものの。相手より早く動けることから先手がとり易い。  その結果、不馴れなはずの大鎌でも簡単に数多くの化物(ポーン)を討ち取り。普段見かけないようなタイプの異形な化物(ポーン)を相手にしても、難なく急所目掛けて攻撃出来ることからヒビキの独壇場となった。
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