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★33話/時は来た!
「雄、今の内だ」
「ぶちかませ!」
見える範囲に化物が寄って来ない事を確認したキョウとリョーイチは、タイミングを見計らっていた雄に声をかけて臨戦態勢に入った。
なんせ雄が言っていた通り、魔法が完成に近付くにつれて防壁となる陣の効力が落ち。逆に雄の攻撃力が増しているのか、見向きもしなかった化物までもが狙いを変えてくる始末である。
けどリョーイチとキョウがしっかりフォローをしてくれるお陰で、雄は力強い言葉でイメージの構築を始めた。
「天上より暗闇を照らす日の女神よ
死者なる亡者を祓いて
我が前に力を示せ」
まずは、正しく魔法効果が得られるかを確認するため。暗闇に閉ざされた空間に、魔法によって出現した光の鱗粉を両手に集める。
それが瞬く間に神々しく輝く光の集合体となり、広げていた両手から弓矢をひく動作へと雄が切り替えると、邪気を払うように近付いて来た化物を自然消滅させた。
「……」「すげぇ」
アニメや漫画ではお馴染みの魔法だが、実際目にすると神秘的なものだ。酷く眩しいはずなのに、守られてる安心感と絶対的力の差を見せつけられて畏れ多いと思ってしまう。
一方魔法を扱う雄は、身の危険を感じた相手が因果の鎖を寄せ集めて、分厚い壁を形成しつつあるのを感じ取り。余力を残してチャンスを逃すぐらいなら、全力で射ぬいて世界を守る事を選ぶ。
「リョーイチ、キョウ! フォロー宜しく」
ーー魔法は全能ではない。
一抹の不安から雄が声をかけると、それを察したリョーイチとキョウが弾を装填し、もしもの事に控えてもらったところで。雄は、射ぬくべき標的を見定めて詠唱を続ける。
「我望むは因果応報
奪われし生命の善悪に応じて
万物すべてに光を与え
所願成就を求めん」
そして雄が選んだ魔法属性は、鳳龍族ならではの祈祷であった事から朱金の光が鱗粉のように舞い初め。リョーイチやキョウに比べて若い未成年だった姿から大人びた容姿へと変貌し、力強く呪文を締めくくる。
「天照大御神」
日本という此の国なら、少なからず加護はあるであろうと選んだ太陽神の力である。
雄が力強く放った矢は1本だが、彼を中心に光が四方八方広がって、暗闇を産み出していた器にダメージを与え。厚い守りを撃ち破った矢は、金色の懐中時計にピシリと小さなひび割れを作って消滅した。
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