★33話/時は来た!

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「分かった」 「ホント? さすが元とは言え、パーティーを組んだ事がある相棒だね」 「そんなことありませんよ。アイツは親友のために先輩を扱き使う奴ですよ?」  要するにシュバルツの私物をヒビキから受け取る事で、見捨てられない状況を作ったのだろう。ヒビキは「平手打ち決定だな」とぼやいてから雄の前に立った。 「雄ちゃんのご所望は?」 「いいんですか?」 「守られっぱなしは性に合わんからね。言っとくけど、リョーイチとキョウちゃん連れて逃げてくれ。っていうのは無しの方向で」  それに魔法の事はよく分からないにしても、結界の要であった剣を下げたことから、ゲームで言うところのMP切れと読んだヒビキ。雄が決断しそうな選択を軽い口調で帳消しすると、苦笑いを溢した雄が返答する。 「バレバレ、ですか」 「シュバルツが言うには、代償もなしに扱える程、魔法は万能じゃないようだからね」 それに此処まで世話になっといて、見捨てる気はないと示すように、試し撃ちに急降下してきた化物(ポーン)を撃ち落とした。 「ヒビキさんがまともに銃を使った……」 「そら使うよ。死にたくないもん」  けど以前から苦手だと聞かされていたキョウは、視覚で捉えていない背後の化物(ポーン)ですら、見事に仮面を撃ち抜くヒビキの姿に驚くばかりだ。 「普段鈍器のように扱っといてよく言うぜ」  しかし、そんな事を言ってた矢先にリョーイチが弾切れを起こし、形成が崩れてきたところで、雄が即席の障壁を発動。  自分独りなら、幾らでも離脱する手段があったりするのだが__。度重なる化物(ポーン)の攻撃に耐えられなくなってきた障壁が、ピシリと音をたてて穴が空き始める。 「さすがにヤバイな」  残っていた予備マガジンを装填したキョウが、後がない事に気付いて焦り始める。  障壁を維持しようとする雄自身、身の危険を感じ始めるものの。シュバルツとの約束を裏切れず、渾身の魔力を振り絞って立て直しを図るが__。  一匹の化物(ポーン)と目が合った瞬間、生唾を飲み込んで死を覚悟した。  ーー通常個体ではない。  まだ生き残っていた変異種である。  それに気付いたヒビキが真っ先に仮面を狙うが、強度が段違いで弾き返され。続いてキョウが標準を定めようとするものの間に合わず、変異種は障壁を構築している雄を狙って飛びかかった次の瞬間だった。  横から獲物をかっさらうように変異種の化物(ポーン)の頭を撃ち抜いたムグルが、接近戦を得意とするジークとコヅキを引き連れて助けに来てくれる。 「お待たせ、フレム君」 「どうにか間に合ったみたいね」 「ーーイヌカイさんは?」 「野外にペイされたってよ」  誰も気にしてないようだが、ヒビキの前に飲み込まれた仲間を気にしてジークが尋ねると、障壁の内側からリョーイチが返答。  おもいっきし擬音だが、ひとまず化物(ポーン)に消化された訳ではなさそうなので安堵する。
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