34話/報酬はいかほどに?

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 __それから3日後。  周囲が落ち着きを取り戻し、見舞いに行くべきかと悩んでいたタイミングで、リョーイチとキョウの携帯電話に受信通知が届いた。 「おい、ムグルから来てんぞ」  リビングで寛いでいたリョーイチが、皿洗い中のキョウに声をかけると、蛇口を止めて自前の携帯電話からメッセージを確認。  そこにはムグルからグループLINEで、『報酬を振り込み出来ないから、都合が良い日に受け取りに来てほしい』というコメントが入っており、既読者は2名のまま。  キョウが試しに{雄は?}とコメントを送ると、間も無くムグルから{まだ本調子じゃないから寝てるよ}と返ってきた。  すると今度はリョーイチが、{見舞いがてら、そっちに行っても良いか?}とコメント。彼等の隠れ家のこともあって断られると思ったが、ムグルは条件付きで許可する。 {他言無用で来れるなら、特別にリョーイチ君とキョウ君だけ招待するよ} {ヒビキさんを警戒してるのか?}  ーーと、これはキョウからのコメント。  すでに居場所が知られてるから、隠しても意味がないような気もするが……。 {それもあるけど、仕事してるから}  つまりヒビキに居場所を知られても、変わらず活動を続けていることから、最低限の情報漏洩を図りたいようだ。  そこでリョーイチとキョウは、了解のスタンプをコメント代わりに送ると、その場で相談して。キョウが代表として{明日、二人でお邪魔する}とムグルにコメントを送った。 「もしかして、今二人でいるのかな?」  思いのほか早い決断に、隠れ家のホールにあるソファーに座って手を休めていたムグルは、羨ましいとばかりに小さく微笑んだ。  案の定、雄はクリスマスの日から起きる様子はなく。さすがに身体(からだ)の方がもたないからと、点滴を打って見守る状態が続いている。 「今日はヒビキさんが来るような事をシュバルツさんが言ってたし、お休み中だったりするのかな?」  だとしたら、ちょうど良いタイミングに連絡出来たかもしれない。ーーと、ムグルが自己満足に浸っていたところへ。なんとも見事な赤紅葉を左頬にこしらえてきたシュバルツが、地上から地下の隠れ家とやってきた。 「あれ? ヒビキさんと喧嘩でもしたの?」 「まぁそんなところです。避けたら尚更怒ると思いまして」  先輩に対して馴れ馴れしい言葉遣いは出来ないと、慣れない様子で返答するシュバルツに、ムグルは(警戒されてるなぁ)と思いながら対応する。 「御苦労様。治療しようか?」 「いえ、それでは反省にならないんで」 「良い心掛けだね」  ただ見た目は痛々しく、奥さんに平手打ちされた旦那と間違われそうである。
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