34話/報酬はいかほどに?

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「湿布ぐらいは張りなよ」 「分かってますよ」  尤も湿布1枚で隠せる程、ヒビキの手の平サイズは小さくないので気休めにしかならないと思うが……。シュバルツは、ひらりと手を振ると厨房へ向かい。 「あ、ヒビキからの伝言で。大晦日に軍人カレー食べ放題にするから、良かったら食べに来るよう言われましたけど」 「あー、フレムの報酬の件だね。グーじゃなくても有効なんだ」 「?」  ひょっこり顔を出してた言ったシュバルツには、事情を知らない話を口走るムグル。  けどそこは、ニッコリと先輩という立場を利用して誤魔化してしまうのだから腹黒い。  さすがのシュバルツも深掘り出来なかった。 「フレムの容態は相変わらずですか?」 「髪色が戻ったから、そろそろ起きそうではあるけどね。とりあえず生活費のことがあるだろうから、報酬を渡すためにリョーイチ君とキョウ君を招待したよ」 「分かりました。それじゃあついでに迷惑料として、この名刺を二人に渡しといてくださいませんか?」  そう言って、仕事の都合で同席出来ない事を知ってるムグルに歩み寄ったシュバルツは、2名分の名刺を内ポケットから取り出して一言付け加える。 「ヒビキに見つかると面倒なので」  すると名刺を受け取ったムグルは、名前を確認して質問する。 「君の隠し玉かい?」 「まぁ、そうですね。今回の件でバレそうなんで、手離すことにしました」 「よく今回の件に荷担してくれたね」 「その代償がコレですよ」  つまり、ヒビキにひっぱたかれるような条件を愛弟子から提案されたのだろう。明らかに快く引き受けた感じではない。 「自業自得だよ。二人には何て説明しとこうか? その様子を見ると、ヒビキさんに隠し玉の事は教えてないでしょ?」 「えぇまぁ、隠し玉ですから。言わなくてもベガスに所属している者なら、その価値は分かるはずですけど……。必要ならオレが直接案内しますから言ってください」 「分かった」  それほどの自信があるなら、迷惑料としての価値は十分あるだろう。ムグルは受け取った名刺を見つめて、その名をポツリと呟く。 「ツムギ、ね」
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