34話/報酬はいかほどに?

4/6
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/174ページ
 ーー次の日。  待ち合わせ場所でキョウと出会ったリョーイチは、物珍しい視線を受けた。 「出会った早々喧嘩ふっかけてんのか?」 「いや、雨でも降るのかと思っただけだ」  つまるところ、リョーイチが午前中から手土産持って見舞いに向かうなんて。雨が降り始めても可笑しくない程、珍しい光景を見たという事だ。 「やっぱ喧嘩売ってんじゃねぇかよ💢」 「行くにしてもお前、毎回手ぶらだろ?」 「あ? 見舞品が必要だから今日にしたんだろうがよ」  そうは言っても、ビールとは別にスポーツドリンクを購入しているところからして、彼なりに心配はしているのだろう。 「起きてるといいな」 「期待はしない方がいいぜ。ヒビキのオッサンが昨日足を運んだらしいけど、まだ起きてないからってシュバルツのオッサンに追い返されたんだと」 「アポとって行かなかったのか」 「取ろうにも連絡先知らないだろ。それに、大人の事情ってやつがありそうだしな」 「あー、噂の件か」  実はサンシャインシティに戻ってみると、今回の騒動の手柄はリョーイチとキョウと言うことになっていたばかりか、雄が活躍したことはなかったことになっていた。 「アイツ等にとって都合が良い話かもしれねぇが不自然過ぎる」 「事実と異なるにしても、嘘ではないからヒビキさんも否定しなかったしな」 「お陰でオレ等は、たらふくタダ飯を食わせてもらったけどよ」  でもリョーイチは、素直に喜べなかった。  誘っても雄の意識は戻ってなさそうだし、軍人に囲まれて良い気はしないだろう。 「もし報酬が相場より少なくても、文句言えねぇよな?」 「護衛は結果が全てだ。不満があるなら、二度とその場のノリで仕事を決めるなよ」  そもそも雇い主である雄自身、護衛を頼む程弱い訳ではなかった。むしろ勝手に動き回れるのが迷惑だから雇っただけの事だろう。  キョウに注意をされ、不機嫌そうに舌打ちをするリョーイチだが__。言い返せないのは、彼自身雄の厚意に甘えてしまった自覚があるからだ。 「年末年始仕事三昧かよ~」 「計画的に使わないからだ」 「そう言うお前はどうなんだよ」 「仕事初めは三が日過ぎてからだ」  つまりキョウは、出費をおさえて年末年始の蓄えはあるらしい。偉そうに眼鏡を指先でくっと修正するが、裏を返せば相方の自宅に上がりこめば飯にありつけると言うことだ。  リョーイチは最悪の場合、御相伴に預かろと考えながら目的の孤児院に到着すると、シュバルツが表でバイクの整備をしていたので声をかける。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!