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「知り合い?」
「ヒビキさんの仕事でよくつるむんだ」
「情報処理が主な仕事で、オレ等のような戦闘員じゃねぇけどな」
ムグルがそれとなく尋ねてみると、キョウのコメントに続いてリョーイチが両腕を後頭部に回して補足を口にした。
けど非戦闘民であるなら、不用意に外界へと通じる階層に居るものなのだろうか?
リョーイチとキョウは、疑問に思わなかったようだが……。遠ざかる鈴の音からして、彼女こそが此の世界の分岐点なのだと気付いた雄は、この世界の行く末に不安を抱きながらも割り切るように相槌だけに止めた。
異界から来た彼等に、
この世界の運命は変えられない。
特に伝説によって生かされてる雄は、此の世界にとってマイナスに成りかねなかった。
「それより早いとこ食堂にいかないと、コヅキの小言に付き合わされるぞ」
「え、コヅキちゃんがいるの?」
足を止めたキョウを促すためにリョーイチが脅すと、てっきりリョーイチとキョウだけと思っていた雄がムグルを一瞥。
彼等は雄が案内役として雇った報酬として奢る事になってるが、コヅキとは何の約束もしていない。
「場所取りさせてるの?」
「まぁな」
しかもリョーイチのしてやったりの顔からして、尋ねたムグルの人の良さを逆手にとったようだ。ましてや慕ってくれてる女の子にご馳走しない程、ムグルは鬼じゃない。
「フレム君は心配しなくても良いよ」
「悪いな、ムグル」
そう言う割りには、リョーイチの言動を止めなかったキョウも間違いなくグルだろう。
妙なところで意見が合う二人に挟まれたムグルは小さく溜め息を吐いたが、後にリョーイチに絡まれる彼は楽しそうであった。
けど雄は__。
ーーーーーーー。
「おい!」
「行くぞ、雄!」
「うん」
この場を去ったユイガの後を密かに追うジークの姿を横目に、複雑な思いで報酬を受け取りに向かうのであった。
【完】
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