★13話/能ある鷹は爪を隠す?(2)

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「頭突きされるぞ!」  誰かが戦況から忠告した途端、雄は受け身の体勢で背中から倒れてみせると、その勢いを利用してリョーイチを足で投げてしまう。 「おい、投げ技有りなんて聞ぃてねぇぞ」 「俺も頭突き有りなんて聞いてないけど」  お互い異議有りとばかりに言い合うが、決して本気で言ってる訳じゃないことは、拳を交えば直ぐに分かった。  わざと軌道が読みやすいストレートパンチをしてくるリョーイチに対して、その攻撃を受け流してキックで応戦する雄。  けどリョーイチは、その流れを前もって予測していたようで、ばっちり防御して次の攻撃に移る。 「ラリーのように続くな」 「リョーイチにしては珍しいんじゃない?」  二人の戦況を見守るイヌカイとコヅキが、思わぬ展開にワクワクと高揚して来た頃。  普段勝ち急ぐリョーイチを知っているキョウは、その集中力を別の事にも活かして欲しいものだと溜め息を吐いた。  そして時刻は、約束の時間2分前。  決着をつけなければ折り半なのだが、両者勝ちを譲らないまま。もつれ込む様子から、ジーグが新たな指示を出す。 「イヌカイさん、ホイッスルの準備をしといて下さい」 「はいよ」  内心笛の音に驚いて、(フレム)がリョーイチの一撃を喰らうのではないかと不安が過るものの。此処はリョーイチの相手をしている雄の実力に賭けるしかないと、首に下げてた銀笛をくわえるイヌカイ。  時計と戦況を交互に確認し__ 「何してるんだ?」  そこへやって来たイヌカイの上司。  ヒビキの登場によって、会場はどよめき、雄の集中力が切れてしまう。 「なんか、お偉いさんが来たみたいだよ」 「今更かよ」  しかし、上官(ヒビキ)の前でリョーイチに攻撃をくわえる事に躊躇(ためら)いが生じた雄は、相手に圧されるまま後退。  もう先が無いと気付いたのは、後退した右足のかかとに壁の感触が伝わった時だった。 「恨むなよ」  ゾッとする殺気と共に投げ掛けれた言葉。  その真意を理解する前に胸倉を掴まれた雄は、壁に押し付けられる。 「フレム君!」  嫌な予感がしたと同時にコヅキが雄の名を叫び、イヌカイが咄嗟に(ホイッスル)を響かせる。  しかし固く握られたリョーイチの拳は、目標に向かって真っ直ぐ叩き付けられ。雄の真横に見事なクレーターが出来たタイミングで、タイムアップとなった。 「今度本気のケンカやろうぜ」
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