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「頭突きされるぞ!」
誰かが戦況から忠告した途端、雄は受け身の体勢で背中から倒れてみせると、その勢いを利用してリョーイチを足で投げてしまう。
「おい、投げ技有りなんて聞ぃてねぇぞ」
「俺も頭突き有りなんて聞いてないけど」
お互い異議有りとばかりに言い合うが、決して本気で言ってる訳じゃないことは、拳を交えば直ぐに分かった。
わざと軌道が読みやすいストレートパンチをしてくるリョーイチに対して、その攻撃を受け流してキックで応戦する雄。
けどリョーイチは、その流れを前もって予測していたようで、ばっちり防御して次の攻撃に移る。
「ラリーのように続くな」
「リョーイチにしては珍しいんじゃない?」
二人の戦況を見守るイヌカイとコヅキが、思わぬ展開にワクワクと高揚して来た頃。
普段勝ち急ぐリョーイチを知っているキョウは、その集中力を別の事にも活かして欲しいものだと溜め息を吐いた。
そして時刻は、約束の時間2分前。
決着をつけなければ折り半なのだが、両者勝ちを譲らないまま。もつれ込む様子から、ジーグが新たな指示を出す。
「イヌカイさん、ホイッスルの準備をしといて下さい」
「はいよ」
内心笛の音に驚いて、雄がリョーイチの一撃を喰らうのではないかと不安が過るものの。此処はリョーイチの相手をしている雄の実力に賭けるしかないと、首に下げてた銀笛をくわえるイヌカイ。
時計と戦況を交互に確認し__
「何してるんだ?」
そこへやって来たイヌカイの上司。
ヒビキの登場によって、会場はどよめき、雄の集中力が切れてしまう。
「なんか、お偉いさんが来たみたいだよ」
「今更かよ」
しかし、上官の前でリョーイチに攻撃をくわえる事に躊躇いが生じた雄は、相手に圧されるまま後退。
もう先が無いと気付いたのは、後退した右足のかかとに壁の感触が伝わった時だった。
「恨むなよ」
ゾッとする殺気と共に投げ掛けれた言葉。
その真意を理解する前に胸倉を掴まれた雄は、壁に押し付けられる。
「フレム君!」
嫌な予感がしたと同時にコヅキが雄の名を叫び、イヌカイが咄嗟に笛を響かせる。
しかし固く握られたリョーイチの拳は、目標に向かって真っ直ぐ叩き付けられ。雄の真横に見事なクレーターが出来たタイミングで、タイムアップとなった。
「今度本気のケンカやろうぜ」
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