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14話/我、汝を凸ピンの刑に処す
「フレム君、怪我はないかい?」
「はい、何とか」
勝負は、リョーイチの勝ち。
けれど客人相手にすべき行為ではない、と判断したイヌカイは、その場にへたれこんだ雄に声をかけてから鋭い眼差しで問題児を名指しする。
「リョーイチ」
「何だよ。怪我させてねぇだろ」
毎度の事ながら反省の色がないリョーイチは、小言は聞きたくないとばかりに顔を背けて見せた。
イヌカイと出会った当初は、リョーイチの方が弱かったこともあって可愛げがあったものの。今や肉弾戦となると、イヌカイですら手が出せない実力の持ち主となった今。イヌカイが怒ったぐらいでは、何の効果もない。
だが、しかしーー
サンシャインシティを仕切り、リョーイチの雇い主でもあるヒビキは別格である。
「リョーイチ♪」
声色を変えず、穏やかな笑顔で中指を親指で押さえた右手を構えて見せるヒビキ。
ーー相当お怒りのようだ。
彼の利き手を知ってるリョーイチは、真っ青な顔で抗議する。
「ちょっと待て!!」
ところが、抗議は認めないとばかりに再度「リョーイチ」と微笑みを称えてお呼びになったヒビキは、諦めの悪い相手に歩み寄って「お、で、こ♪」と要求。
一見可愛い罰ゲームに見えるかもしれないが、ヒビキの実力を知るリョーイチは、青ざめた顔で本気で嫌がやる。
「何でだよ?!」
「リョーイチ♪」
「たんっ」
「リョーイチ♪」
ーー覚悟を決めろ。
笑顔の裏に潜むヒビキからのメッセージを受け取ったリョーイチは、ガチガチを歯を鳴らしながら逃げるのを止めた。
相手がイヌカイとは違って、生活費を支えてくれているヒビキを敵に回しても良い事がないし、実力行使をしたところで100%負ける相手に喧嘩を吹っ掛ける勇気はさすがになかった。
よって華麗にヒビキから凸ピンを食らったリョーイチは、ぱぁーんと軽快な音と共にバッタリ仰向けに倒れーー。
「大丈夫、息はあるよ」
冷静にムグルが診断するけど、ヒビキの実力を知らない雄は、青ざめた顔で震え上がる。
尚この間、ヒビキに手招きされたキョウも凸ピンの刑を処され。事態が飲み込めない雄は、内心半泣き状態でヒビキと対面することとなった。
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