14話/我、汝を凸ピンの刑に処す

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「やぁ♪ 初めまして、よく来てくれたね。君達に危害を加えるつもりはないから、気を楽にしてほしいな」  てへぺろっとばかりにおどけて見せるが、ヒビキの思わぬ一面を見てしまった(フレム)は、子犬のように震えていた。 「ヒビキさん、お仕置きは客人に見えない所でしないと」  ひとまず手加減したことから、倒れた二人の回復は早かったものの。ムグルの横にびったりついてる(フレム)の様子から、溜め息混じりに注意するジーク。  ただヒビキが凸ピンの刑を処する理由は分かりきっているので、(しつけ)をするなとは言わなかった。 「いやぁ~、もうね。警報を無視して外を出歩くわ。荷を蹴散らしながら鬼ごっこするわ。客人に勝ちを譲らないわ。俺も我慢の限界が有るわけよ、分かる?」 「いや、鬼ごっこの件はオレの所為じゃねぇし」 「右に同じく」 「シャラーップ! 連帯責任ってやつだから、引き留めなかったキョウちゃんにも責任はある!!」  ぷんぷんとお茶目に怒りながら、不満げな顔を浮かべるリョーイチとキョウに小言を聞かせるヒビキ。  悪い人ではなさそうだが、叱られる3つの項目に心当たりがある(フレム)は、ムグルを盾に怯えていた。 「お、俺も凸ピンの刑に処されるのかな?」 「さすがに客人にはしないと思うよ」  実際ヒビキは、リョーイチとキョウを叱った後。両手を叩いて周囲を黙らし、注目を一心に浴びたところで、野次馬と化した部下達に声をかけ始める。 「はいはい、これにて馬鹿騒ぎ終了~。壁の修繕ヨロシク頼むな、イヌカイ」 「俺っすかぁ?!」  流れるように面倒事を部下に押し付けるのも慣れたもので、粗方場が収まったところで踵を返すと、(フレム)とムグルに声をかける。 「さて、本題は場所を移してから話すとして。改めてご挨拶させてもらうよん♪」 「貴方がヒビキさんご本人のようですね」  陽気で無害を主張するヒビキに対して、ムグルが怯える相方を守るように発言。  怒っているようには見えないが、警戒心を与えてしまった自覚はあるので。ヒビキは、にこやかに「その通り♪」と答え。ジャージ姿でありながら、姿勢を正してホテルマンの如く歓迎の一礼をして見せる。 「突然のお声かけにも関わらず、お越し頂き感謝いたします」 「軍服であれば、フレムを連れて帰らせてもらうところでしたよ」 「この度は、あくまで私用なもんでね。リョーイチ、キョウちゃん。」  ムグルの牽制にへらっと対応するが、これ以上お気に入りを巻き込んではならないと判断したヒビキは、さらりと二人に任務終了を告げた。
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