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けれど相方の悔しそうな表情を一瞥したリョーイチは、ダメ元でヒビキの発言に食らい付く。
「ちょっと待てよ。勝手にオレ等の依頼人を連れて行くなよな」
「依頼人?」
「東京の地理に疎いんで、俺が勝手に護衛を兼ねて案内人として雇ったんです」
リョーイチの意図を察した訳ではなく。
ヒビキに警戒心を抱いた雄は、保険を兼ねて話に乗った。
これで例え騙されたとしても、逃げる隙が出来るはずだと考えてのことである。
「聞いてないよぉ、キョウちゃ~ん💦」
「俺等の私用のことなんで、報告しませんでした」
「ぶぅぶぅ。もう身内なんだから、教えてくれたっていいのにさ~」
「俺は認めてませんから」
実は、キョウの姉とヒビキが婚約した関係で。キョウにとってヒビキは、義兄にあたるのだが……。今や唯一の肉親となった姉を取られた事もあって、ヒビキの前ではなかなか素直になれないでいた。
「しょんなハッキリと言わなくても~😭」
「気持ち悪いんで止めてください」
大体そんな泣き言を言うのなら、少しは身内として信頼して欲しいと思うのだが……。
恥ずかしさが勝ったキョウは、ヒビキを冷たくあしらった。
「とにかく、そう言う訳だから。フレムに同行させてもらうよ、ヒビキさん」
「う~っ」
まさか、こうもあっさり雄が二人を雇うなんて思ってもいなかったヒビキは、悔しそうに唸った。
そして今度は、キョウに便乗してコヅキが挙手する。
「はいはーい! 私も同席した~い❤️」
「ダ~メ」
この場を楽しんでるだけだと判断したヒビキが断りを入れるが、口の達者な彼女も負けてはいない。
「ぶぅぶぅ、そう言うことなら……。ムグルさん、私を雇ってぇ~♪」
「いいよ」
可愛く両手を合わせて、傍にいたムグルにお願いすると、仲間外れはいけないだろうからとあっさり承諾。此れにはヒビキも思うところがあるようで、ガックリと膝を付いた。
「早速裏切られましたね」
「ジーク、私は生活のために仕事を得ただけだからね。裏切りなんて心外だわ」
そもそも彼女は、ヒビキに報告をしたところで、引き受けた仕事を終えていた。
発言に気をつけて欲しいと、毛先を指でいじっていた横髪をさらっと流したコヅキは、ツンといじけた態度をとってみせる。
「また高い買い物されたんですか? 今年の冬は、一段と激しくなるそうですよ」
「だからこれから稼ぐの!」
「女の子は色々と大変だね。ジーク君は、軍人だから収入は安定してそうだけど」
「ーー貴方がたはどうなんですか?」
私情を挟む質問なので、気分を害しないかと心配に思ったジークだが……。ムグルは、そんな事ぐらいならと軽く口調で返答する。
「ボク等は、生活に困らない程度には稼いでるよ。雇用の賃金は経費から落としてもらえるよう、交渉するつもりだしね」
「さすがムグル✨」
「だけどフレム君は、私用で雇った方がいいと思うよ。前回の件で個人の限度額超えてるからね」
「がーん!」
自腹を覚悟してた雄は、ムグルの提案に目を輝かせたのも束の間。相方が何を言いたいのか理解したところで、あからさまにしょんぼりと落ち込んだ。
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