14話/我、汝を凸ピンの刑に処す

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「さぁて、此処なら邪魔が入りにくいかな」  ヒビキの後に付いて行くと、ミーティング・ルームとして活用されていそうな一室に辿り着き。邪魔が入らないようドアの前にあった札を使用中にしたヒビキは、部屋のドアを開けて、連れてきた一行を招き入れた。 「好きに座ってくれ」 「あ、あの、ヒビキさん。自分も同席して構わないでしょうか?」 「ん? そりゃあコイツ等同席させといて、お前だけ仲間外れにする訳にはいかないだろ。悪いけど俺の仕事部屋から、例の空き箱と以前シュバルツに見せた資料を見繕ってくれ。正確に覚えてるだろ?」 「はい、分かりました」  そもそもヒビキと同じように、シュバルツと面識があったジークを仲間外れにするつもりはなかったのだが……。記憶力が良いジークに雑用を頼むと、続いてリョーイチ達を手招きする。 「お前等、自販機で茶でも買ってこい」 「それで露払い出来ると思ってんのかよ」  右手を出してヒビキにお金を請求しながらも、リョーイチの勘の良さには恐れ入る。 「そんな訳ないだろぉー。客人に失礼だから、お前らにお使いを頼むんじゃないか」  しかし常日頃(つねひごろ)から都合が悪くなると、尤もな事を言われた挙げ句の果てに、肝心なことを聞けずに物事が進行することもあって。お使いを頼まれた三人は、キョウを残して飲み物を買いに出掛けた。 「皆いっちゃったらどうしようかと思った」 「ちゃんと仕事してもらわないと困るよー」 「スマン」  すでに好きな席についていた(フレム)とムグルに指摘され、キョウが代表して謝罪。  しかしお互い軽い口調だったことから、不思議に思ったヒビキが試しに質問する。 「て言うか、君ら仲がいいね。友達?」 「昨日すき焼を共にした仲です」 「次回は(ブリ)しゃぶだねー」 「今度は割り勘にしてよ?」  キョウの受け答えに呼応(こうお)するように、ムグルが親しげに話しかけて、(フレム)が嫌がる事なく提案する。  その様は、教室で和気藹々(わきあいあい)と会話する友達との戯れそのものだ。 「……ちょっと羨ましいな……」  先月まで、ひょっこり顔を出しては飲みに誘ってくれたシュバルツを思い出したヒビキは、懐に忍ばせていた懐中時計を衣服の上から確認した瞬間、暗い影を落としーー。  その様子をジッと伺う(フレム)に気が付いたところで笑顔を見繕うと、メンバーが揃うまで他愛もない雑談を交わした。      
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