★15話/渾身の等価交換

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「終わったな」 「本気で殴られること間違いないよね?」  ひそっと呟いたリョーイチに、小声でコヅキが思った事を言ったところで、強く頷いて見せるキョウ。あんなに怒りを露にするヒビキは、久しぶりに見た気がする。 「それと、シュバルツさんの身に何かあったようですから。明日にでも、ムグルと一緒に自宅へ伺ってみようと思います」 「正直気が乗らないけどね。小さなお子さん達を巻き込む要因に成りかねないから」 「それで10日間も彷徨ってたのか?」  自宅を知っているのなら、合流出来なかった時点でお邪魔すればいいものを……。シュバルツが守ろうとしている(モノ)を理解しているのか。(フレム)の提案に、溜め息混じりに発言したムグルの様子からヒビキが尋ねると、彼らは苦笑いを溢して同じ答えに辿り着く。 『仕事ですから』 「そうか」  ならば人が良すぎるのだろうと思ったヒビキは、彼らに頼みたいことをどう伝えようか考え始めた。恐らくヒビキに言われなくても、彼等はシュバルツを探してくれるだろう。  だけど彼の身に何かあったと確信した今。  不安でざわつく衝動を抑えこむのに、彼らの協力が必要だとヒビキは考える。   「実は先日、ジークとシュバルツの自宅に上がり込んじゃってさ。何の手掛かりもなく、手ぶらで帰ってきたばかりなんだよね」  軽い口調で話して見せるヒビキだが、組んだ両手はテーブルの上で固く強く握りしめられていく。 「お望みは何ですか?」  神にでも祈るようなヒビキを前にした(フレム)は、相手が本題を切り出し易いようストレートに尋ねた。  無論ここまで話を聞いといて、ヒビキの望みに全く気付かない程、(フレム)は鈍感な性格ではないのだがーー。 「シュバルツを欲しいんだ」  相手も仕事を抱えてると知っていながら、 身勝手な望みだと思うところがあったものの。(フレム)に向かって、ヒビキは頭を下げた。  神出鬼没で、どうしようもない時に限って助けてくれた親友(シュバルツ)を救うには、他人(フレム)に頼る他もう手段がなかったのだ。  けれど(フレム)は、ばっさりその願いを切り捨てる。 「申し訳ありませんけど、引き受けられる依頼(しごと)ではありませんね」  考えていなかった返答ではなかったものの、いざ本人に言われるとダメージが大きいものだ。どうすればその返答をひっくり返せるのか、止まりそうになった思考を巡らせる。  けれど(フレム)の話には続きがあった。 「そもそもフレムは、偽名(ワーク・ネーム)なんで。鳳龍(ほうりゅう) (ゆう)として引き受けても宜しいですか?」 「ちょっと、君!」 「いいでしょ? 物のついでなんだし、欲しいものがあるんだよね」  それがどういう意味なのか、長い付き合いで知ってるムグルが引き留めようとするが、欲しいものがあるなら仕方がないとばかりに口を挟むのを止めた。
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