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仔犬のような無邪気な反応に対して、相手の気持ちに寄り添った提案の仕方。思わず何でも話してしまいたくなる気持ちが、逆に恐ろしくも感じるけど……。
雄ならシュバルツを見つけてくれる。
直感でそう思ったヒビキは煙草をしまって、缶珈琲を開けた雄に話しかける。
「後、資料も見て欲しいんだけど……。いいかな?」
「シュバルツが見ていた資料ですか」
「正しくは、覗き見された資料だけどね。アイツ、神出鬼没だから」
それに対して、苦笑してコメントを差し控える雄。ヒビキは知らないようだが、シュバルツが神出鬼没なのは、時空魔法を使っているからだ。
「いいんですか?」
「それがシュバルツを見つけるヒントになればいいけどね。アイツが姿を眩ましす前に、意味深なこと言ってた資料だから」
そこで早速受け取った資料を順に目を通した雄は、もう一度見直した所で横にいるムグルに回した。
「犯人、二人いるね」
「やっぱそう思う?」
そこでもう一度ムグルから資料を受け取った雄は、二つに分類してからヒビキに差し戻した。
「右が人間の仕業で、左が本命だと思います」
つまりシュバルツの身に何かあった要因は、左の犯人によるものだと言うことだ。
「シュバルツさんの実力を知っているのなら、絶対単独で捕まえようとは思わないで下さいね」
「分かった」
「ついでに言うと、素手で勝てる相手とは思わないで下さい。死にますから」
「肝に命じておくよ」
ヒントをヒントで返す代わりに、真剣な表情でヒビキに釘を差す雄。ハッキリと言わないのは、確信がないからだろうが……。人間相手にシュバルツが負ける程、弱い奴ではないと知ってるヒビキは犯人を絞りこんだ。
「因みに、雄ちゃんのこれからの予定は?」
「えっと……。アポイントはムグルに任せて、今日は昼飯を奢ってもらうだけです。貸しがあるんで」
「ちゃっかりしてるね」
つまり雄自身は、この後動くつもりはなさそうだ。それでも念には念をと、ヒビキは出入口を見張ってにくれているジークに指示を出す。
「ジークも一緒に食べて来なよ」
「いいんですか?」
「此方は目処が付いたからさ。それと、車を一台手配しといてくれ。アポイントが取れたら、シュバルツの自宅まで送迎してあげるよ。歩くと距離があるからね」
「有難うございます」
「なんの、なんの。有益な情報をくれたお返しだよん♪ 帰りも必要ならジークに頼めばいいからね」
つまるところ、お目付役としてジークを連れて行って欲しいという事だろう。
ヒビキの意図に渋い顔を見せる雄だが、護衛を頼んでしまったリョーイチとキョウを置いてく訳にはいかないし……。そうなると、ムグルが雇ったコヅキも付いてくる事になる訳で……。実力があるとは言え、一般人の彼等を守るためには、しっかりとした訓練を積み重ね。彼らをよく知るジークの存在が必要不可欠だと10秒で判断した雄は、仕方なくヒビキのご厚意に甘える事にした。
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