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「フレム君、ヒビキさんにあんな事教えて良かったの? ほぼ無条件にさ」
ヒビキと別れ、食事処までの移動中。
心境を伺おうとムグルが問いかけると、人の目も気にせずムスっとした顔を浮かべた雄が答える。
「今更そんなこと言う? ムグルも引き止めなかったじゃないか。あれぐらいのヒントで解決出来る程、簡単な問題じゃないって分かってるからスルーしてくれたんだろ?」
「まぁね。あれぐらいのヒントで解決出来る問題なら、苦労なんてしないと思うよ」
「大体人命がかかってるなんて、聞いてないんですけど?」
「苦情は出しとくよ」
テレパシーの方で(物を壊すだけの問題じゃないじゃん)と、不貞腐れた様子で文句を言い出した相方に、ムグルは苦笑して出来る事を答えた。
「アイツ等も苦労してんな」
「リョーイチも他人事のように言ってる場合じゃありませんよ。何考えているんですか? フレムさんに寝返ってしまって。ヒビキさん、困ってましたよ」
「ほっとけ! あのオッサン、いちいち面倒くせぇんだよ。毎度毎度、肝心な事話すことなく門前払いしやがってよ」
道案内のため前方を歩いてるリョーイチに、眉を潜めてジークが問いかけると、イラっとした様子で返答するリョーイチ。
確かに思うところはあるが、ヒビキも義弟であるキョウを含め。リョーイチやコヅキを巻き込まないよう、最善の注意を払ってヒビキが行動してることを知ってるジークは、複雑な表現を浮かべた。
「とにかくフレムの……。いや、雄のお陰でヒビキさんの事情が聞けた。面倒事に巻き込んですまない」
「承知の上だよ。なんなら俺の昼飯を奢った後、契約を破棄しても構わないよ? 危険な事になりそうだし」
「はぁ?」
キョウの申し訳なさそうな様子を見て、雄が閃いた事を口にすると、前を歩いていたリョーイチが不機嫌そうに振り返った。
提案としては悪くないはずだが、引き受けた仕事を危険だからと取り下げられたのが気に食わなかったようである。
そこで口の悪いリョーイチが暴言を吐く前に、キョウが雄の提案を却下してしまう。
「悪いが仕事はこのまま引き受ける。あんまり軍の世話にはなりたくないんだろ? 送迎の話が出た時、何だか渋い顔をしてたな」
「ーーよく見てるな。俺等の依頼主は、軍に関わる事を嫌っているんだよ。あんま頼ると減給されそうだし、自力で何とかなりそうな事は断ろうかと思ったんだけどさ」
ーーと、ここで前方を歩くリョーイチを一瞥。気付いたリョーイチが「オレ等の所為か?」と尋ねるけど、雄は「いや」と否定してから理由を述べる。
「あそこで断ったらボロが出そうだし、言及されても面倒臭いから。送迎ぐらいなら、と思って。お言葉に甘えただけだよ」
そこでムグルがテレパシーで(土地勘もなければ、人前で魔法使えないもんね)と言ってきたので。雄も複雑な心境で(うん)と、テレパシーを利用して肯定した後、相手に違和感を与えないよう話を続ける。
「土地勘無いのは嘘じゃないし、依頼主の要望ばっか聞いてると、野垂れ死にそうだから。ムグルも横から何も言わなかったんでしょ?」
「正解。だけど危険な仕事になりそうだから、ボクもコヅキちゃんにご馳走して。契約を破棄してもらう予定だったんだけどなぁ」
「ひっどぉーい! ムグルさん、そんな事考えてたの?!」
「ごめん、ごめん。ひとまず昼御飯を食べたら、ボク達は一旦隠れ家に戻るよ。昨日夕食の買い出しをしちゃったし、置き手紙をしてから遠出しないと、わざと身を隠してる可能性もあるからね」
「行方不明なのにか?」
ムグルの提案を聞いて、疑問をストレートに尋ねるリョーイチ。どうやら彼を含めて、雄を除く四人は違和感に気付いてなさそうだ。
「雄が指摘したことをジーク君が調べてくれたら、分かる事だと思うけどね」
「とにかく昼御飯にしようよ。明日から本格的な案内と護衛を頼むから、リョーイチとキョウは弾薬の補充先とか確保しといた方がいいと思うよ」
そこでリョーイチとキョウは、アイコンタクトを交わして。雄の提案に理解を示したようだが、格安で弾薬を提供してくれるのは、ヒビキぐらいなので。何も言わず、ジークを凝視して圧力をかけーー。
「まぁそこら辺は、僕が何とかしますよ」
溜め息を吐きながらも、ジークは憎めない二人の期待に応えるのであった。
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