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16話/消えぬ繋がり
それから馴染みの定食屋で、リョーイチとキョウは割勘で雄にカツ丼を奢り。ムグルは自腹で刺身定食を食べると、今日世話になった検問所の前で午後1時に待ち合わせの約束をして解散。
そこでイヌカイが再び尾行を試みたが、早い段階で雄とムグルに撒かれてしまい。
落ち込んだ様子でヒビキに報告した。
■□■□■□■□
「絶対只者じゃないっすよ、ヒビキさん!」
「分かってる。リョーイチとキョウちゃんは、あの二人に言われるまで気付かなかったそうだ。お前の所為じゃない」
そう言って500円玉を指で弾き、イヌカイがそれを受け取ったところで頬杖を付いたヒビキは、労いの言葉を投げ掛ける。
「世話をかけて悪いな。それで缶珈琲でも買って、飲んでくれ」
「ヒビキさんは、まだ上がらないんすか?」
「ジークの報告がまだだからな。明日は、何食わぬ顔で送迎しろよ」
「それは分かってますけど……。いいんですか? 何処の馬の骨も知らない連中に、彼等を委ねてしまって……」
ヒビキにとって、リョーイチ達は懐刀。
その事を知ってるイヌカイは、情報漏洩も考えて不安のようだが……。直接雄と交渉したヒビキは、動揺することなく手を動かしながらイヌカイに言う。
「良い勉強だ。彼奴等が本気で困ってたら、サポートしてやってくれ。雄ちゃんなら大目に見てくれるさ。昼飯奢ってくれたら、契約を解約して構わないって。部屋を出て直ぐ、彼奴等に警告してくれたそうだ」
「マジっすか。人質に捕られたと思ってたのに……。お人好しな連中ですね。此方は嬉しいっすけど」
イヌカイは両腕を組んでそう言うと、貰った五百玉を握り直して背を向ける。
「また用が出来たら呼んで下さいよ。あんたへの忠誠心だけは、誰にも負けない自信がありますから」
けれどヒビキは、事務処理をしていた手を止めてイヌカイに断りを申し上げる。
「気持ちだけ受け取っとくわ。それでお前が死んだら、夢見が悪そうだからな」
でもイヌカイは、そんなヒビキの答えを拒否するように「失礼します」と部屋から出ると、入れ違いでやってきたジークに「よぉ」と挨拶してから通り過ぎ様に忠告する。
「君も気を付けろよ」
それが何の事なのか。言われる間でもなく分かってるジークは、イヌカイを黙って見送ると、部屋をノックして。相手の返答を待ってから部屋へと足を踏み入れると、奥で事務処理を続けるヒビキに質問する。
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