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「夜分にすみません」
「どぉってことねぇよ。コヅキも来てることだし、気にすんな」
「えっ?!」
招き入れてくれたリョーイチの口から、耳を疑いたくなるような言葉を聞いて。半信半疑で部屋に入ると、床に座ってライフルの手入れしているキョウをベッドに座って眺めているコヅキの姿があった。
「さすがにキョウは、常識がある人だと思ってました」
「勝手に入ってきたんだから、しょうがないだろ」
ジークに白い目で見られ、誤解を解くために作業の手を止めたキョウは言った。
そこから察するに、リョーイチがドアを開けた瞬間。コヅキが有無も言わさず入室して、居座っている状態なんだろう。
「コヅキちゃん、女の子の自覚あります?」
「失礼しちゃう、ぷんぷん」
ムッとした顔で言うけど、長年の付き合いから本気で怒ってないと気付いたジークは、溜め息を吐いてみせた。
「ヒビキさんからも注意されたでしょ? 間違いが起きるといけないから、部屋を別けているんですよ?」
「差別はんたーい!」
「差別じゃなくて区別ですよ。キョウも、たまにはビシッと言って下さい! リョーイチには期待してないんですから」
「お前、さらっと失礼な事を言いやがるな」
けどリョーイチが健全な男の子であることを知ってるジークは、余計な事は言わずに両腕を組んでコヅキにお怒りモード。お堅い性格なので、風紀を取り乱す彼女の行いが許せないようだが……。作業に集中出来ないとばかりに、キョウがジークに話題を振る。
「ところで何しに来たんだ? ジーク。ヒビキさんに、何か言われたのか?」
「いいえ。雄さんとムグルさんの事で、個人的に心配な事がありまして」
するとコヅキが、軽い口調で「ズバリ!」と前置きしてからジークの心配事を言い当てる。
「ジークも、あの二人の連絡先を知らないから不安なんでしょう?」
「じゃあ、コヅキちゃんも?」
「まぁね。解約の話を持ちかけられたのに、連絡先も知らないまま解散しちゃったんだもん。さすがに心配になって尋ねてみたら、普通に連絡先交換してるの! 二人してズルくない?! 私も交換したかったのにぃい!」
ボフボフとベッドの上で枕を叩き、必死に抗議するコヅキだが……。協力する意志がないのか、リョーイチは「うっせぇな」と言うだけだし、キョウは「また聞いてみればいいだろ」と慰める程度しか言わなかった。
「ブロックとか、されてないんですか?」
「されてねぇよ」
「無事に隠れ家に戻って。雄はもう寝たらしいが、ムグルは仕事で暫く起きてるそうだ」
ジークの質問に即答したリョーイチに代わって、キョウが自前のスマートフォンを開いて見せて言うと、確かにムグルらしき人物とのやり取りをLINEで成立させているようで。相手からの返信には、〔雄は寝てるから、用があるからグループLINEじゃなくて。個別にしてくれない?〕とあった。
「ヒビキさんにこの事は?」
「言わねぇよ」
「相手も、俺達が軍人じゃないから教えてくれたのかもしれないしな」
再びジークの問いに即答したリョーイチに代わって、キョウがやんわりとヒビキに報告しない理由を告げた。
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