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一方リョーイチ達から一旦離れることが出来た雄とムグルは、隠れ家のカウンター処で情報を整理し、これからの事を相談していた。但し雄は、一度横になってたものの。リョーイチとキョウのLINEが気になって、寝れずに起きてきたパターンである。
「あれから特にコメントがないねぇ。ブロックされてないと安心して、明日の準備を始めたのかもしれないよ」
「それなら良いんだけど……。ヒビキさんに連絡先教えてたりすんのかなぁ? 釘を差しとけば良かった」
相手が軍人なこともあって、頼みは聞いても連絡先はわざと教えなかった雄は、ヒビキと仲が良さそうなリョーイチとキョウの動きを気にしていた。
片や相方のムグルの方は、アポイントや報告を済ませたスマートフォンの画面を消し、軽く口調で言葉を返す。
「そんな気にすることないと思うよ。雄自身が軍人を嫌ってる訳じゃないんだし、ヒビキさんもボク等の仕事に関してはノータッチだったじゃないか。分かってるんだよ、踏み込んじゃいけないラインが」
「それなら良いけど……。あの人、敵に回しちゃいけないと思った」
「アリアス上司と詮吏副上司を足して二で割ったような人だったよね。底知れぬ実力者感はあったよ」
それでも和やかに交渉を成立させたのは、雄ならではの持ち味だろうと思って、ムグルは高く評価していた。
「記憶の方は大丈夫なの?」
「多分今晩が山場だよ。次から次へとフラッシュバックのように画像がチラついて、集中出来なくなってるから」
「その状態でよくカツ丼奢らせたね」
「食える時に食わないと、東京じゃあ食えそうにないからさ」
「まぁそれは言えてるかもね。楽しみにしていた様子とは違うし、水族館ではガチャやお土産を買い損ねたもんね」
「そうだよ! せめて饅頭とかクッキーを買って来れば良かった、糖分が恋しい😭」
「ご臨終様」
拳を固め、カウンターで突っ伏す雄にムグルが慰めの一言をかけると、更にチラついてきたフラッシュバックに耐えきれず。雄は、カウンター席から腰を上げて寝床に向かった。
「寝てくるの?」
「うん。今寝たら十時ぐらいに起きて、ムグルに回復魔法かけてもらったら、復活しそうだから」
「無理しちゃダメだよ」
「分かってるよ。だけど大事な約束を思い出しそうなんだ。ヒビキさんを守ってほしいっていう、あのメッセージにも。何か意味があるんだと思うんだよね」
「それでも無茶はいけないよ。この世界には、化物がいるんだ。ボクの回復魔法を使っても体調がよくならなかったら、予定はキャンセルするからね」
「分かった。おやすみ、ムグル」
するとムグルは、優しく微笑んで「行ってらっしゃい」と声をかけると、祈るような想いで雄の背中を見送りながら「良い夢を」と呟いた。
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