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ある日、シュバルツは大切にしていた懐中時計がロッカーから無くなってる事に気付いた。
しかし時の民の血も受け継ぐ彼は、魔法で誰が犯人なのか。直ぐに突き止めた。
そして、大切な懐中時計をゴミ箱に捨てられた事も……。彼は、過去視で知っていた。
「おいおい、変な言い掛りするなよ。俺があんたのロッカー漁って、大切にしたもんゴミ箱に捨てた証拠でもあんのかよ」
警察官でありながら、やってることは最低極まりない職場の虐め問題。上官はシュバルツの言い分を信じることが出来ないと、問題を先送りにした結果がこれだ。
味方がいないと気付いた連中が付け上がるのはよくある話で、証拠が無い暴力沙汰は御法度故に本人も仕事を続けるために我慢をしていた。
しかし、今回ばかりはと覚悟を決めて拳を握りしめ__
「随分強気だな。人が見てる目の前で、こんなもん捨てるなよ」
間一髪のところで割り込んできたのは、助っ人という名目で派遣されたフレム=ウイング。見た目は十八という若さにも関わらず、実力はチームナンバーワン。何かあると思っていたが、彼が拾ってきた懐中時計を見せたところで。シュバルツが追い詰めた男を含め、取り巻きを呼び出す放送が流れた。
ニヤリと不敵な笑みを浮かべる雄。
その理由を知ったのは、シュバルツが拳を緩め。追い詰めた連中が呼び出しに応じて、その場から居なくなってからだ。
「ごめん。外観しか拭いてないから、壊れてないか確認して」
持ってた懐中時計をシュバルツに渡すと、驚きと戸惑いから返す言葉を失ってる相手に雄が言葉を続ける。
「もう二度とあいつ等に会わなくて済むようにしたけど、慌ててロッカーの鍵を閉め忘れないようにな」
「なんで、それを?」
シュバルツは、ずっと独りで行動をしていた。だから自分に証言者がいない事も、本人が一番理解していた。
けど雄は、それは勝手な思い込みだと言わんばかりに答える。
「目の使いどころだよ」
しかし、この時ーー
シュバルツは、雄が言わんとする意味を理解する事が出来なかった。
ましてや自分と同じものを見ることが出来る人物がいるなんて想像もしてなかったシュバルツは、何かと手助けしてくれる雄が不思議でたまらなかった。
「隠しカメラで観察でもしてんのか? ストーカー」
「そんな暇が何処にあんだよ、器用貧乏」
「何だと?」
助けてくれる相手に素直になれず、雄と衝突するのは当たり前。それでも仕事仲間としてつるむようになり、雄の事を少しずつ理解していったシュバルツは、後輩が出来、独りで食事をすることも減って、単独で異界に出向く仕事を任されるぐらいの人望と信頼に恵まれた頃には、シュバルツの傍に雄の姿はなかった。
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