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19話/カラクリ書斎
「何時見ても圧巻ですね」
「すっごい!」
「主人がDIYした部屋なんです」
「シュバルツらしいですね」
彼の記憶が戻っていた雄は、少々困った顔を浮かべてマリナに返答すると、目の前に設置された机を一瞥したものの。入室して左右の本棚を見比べた雄は、右側の本棚に注目した。
整然と並べられた書籍は、本の大きさや形も大小様々で、左右両方とも整理整頓はされているものの。シリーズもの以外は、空いた隙間から突っ込んでいった印象を受けた。
しかし、明らかに魔法で小細工が仕掛けられている事から不思議に思った雄は、右側の本棚を暫く眺めた後、左側の本棚を上から下までざっくり見渡してマリナに尋ねる。
「あの、本を動かしたら怒られますかね?」
「そんなことはありませんよ。お好きになさってください」
雄の質問に愛想良く答えるマリナ。
すると雄は、「有難うございます」と礼を伝え。闇雲に本を引き抜くことなく左右の本棚を見比べては、慎重に本を選び出す。
「何か気になるモノでもあった?」
「いや、ちょっと……。他のシリーズは整頓されてるのに、この黒表紙のシリーズだけバラバラだなぁと思って」
ムグルの質問に答えた雄は、選び出した1冊の黒表紙の本を一瞥した後、左右の本棚を見比べて。後、20冊程同じ本があることを確認した。
「ヒビキさんでも動かしたのかな?」
「いえ。確かにヒビキさんは、〈何か仕掛けがありそうだ〉とは言ってましたけど……。そこの机の物を触ったぐらいで、書物を動かしたりはしてませんよ」
ムグルの返答に異議を申し立てたジークは、校長室の名残りであるディスクを指差し。興味を抱いた雄は、机に歩みって卓上の物を確認した後に引き出しを開けていく。
「引き出しの中に、白い本が一冊入ってるぐらいでしたけど」
「これか」
ジークの証言通り、1冊の白表紙の本を見つけた雄は、それを手に取ると、最初に気になった本と見比べた。
表紙の色は違うが、同じシリーズのようにも見える統一感。光に反射させると、黒表紙にはローマ数字で7。白表紙には漢字で針と書かれており、中身を見比べてみると全くの別物だった。
そこで不思議に思った雄が、表紙となる紙を外してみるとーー。本誌とは別に、お手製の表紙を被せているようで。雄は、白と黒両方共の本誌を確認して閃く。
「時計か」
再び左右の本棚を見比べて、円形ではないにしろ。本棚の一部の仕切りに厚みがあり、器用に菱形を象っていることに気が付いた。
しかも、その仕切りを挟み込むかたちで魔力を感じることから。本棚に散らばっている数冊の黒表紙が収まりそうである。
「なんか閃いたようだね」
「うん、コレとよく似た黒表紙の本を探して。俺の読みが正しければ、合計24冊。各巻2冊ずつあるはずだよ」
すると続いてキョウが、この部屋のカラクリに気付いてニヤリと笑みを溢した。
「なるほど、そう言うことか」
「キョウ君。悪いけど、高いところ任せてもいいかな?」
「僕らも手伝います」
「私も!」
ムグルが長身のキョウに声をかけると、率先してジークとコヅキが動いた。
そして、ジッと様子を伺っていたリョーイチは、部屋の前で立ち尽くす彼女に声をかける雄に注目する。
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