7人が本棚に入れています
本棚に追加
「大がかりな仕掛けだな」
「校庭の真下に地下室がある感じか」
謎を解いた本棚の向い側ーー。
ちょうどシリーズでまとめていた一角が、引き戸のような仕組みとなっていたようだ。
出現した階段は幅80cm程で、すれ違いに苦労しそうな狭い造りだが天井は高く。キョウが屈む必要がない程であった。
「電気付いてないの?」
覗き込むと、吸い込まれそうな暗闇が続く階段。生憎懐中電灯は持ってない、と言うか。魔法が使える雄とムグルは、必要性がないので持ってないだけだが……。
「これじゃないですか?」
真っ白な壁に溶け込むように、真っ白な押しボタン式のスイッチを見つけたジークが押してみると、パッと階段が明るくなった。
「なんか、明るくなったらなったで。天に召されて逝きそうな階段だな」
「そう言う割には、我先に降りようとしないでね。リョーイチ君」
度胸が座っている性格のようで、今にも階段を独りで降りようとしたリョーイチを引き留めたムグルは、地下から感じる時と死神の魔力に警戒心を強める。
そこで雄は、ウェストバックに入っていたヘッドマイクを取り出して装着すると、「俺が先に様子を見てくるよ」と言って、アストラルガンを構えた。
「仕事取んなよ」
「そうは言っても、見られちゃマズいもんがあっても困るし、通信機は貸し出せないものだから譲ってよ」
「ちぇ」
遠回しに準備が足りないと雄に言われ、舌打ちしながらも先行を譲ったリョーイチは、不貞腐れた顔をしながらも忠告する。
「何かあったら叫べよ」
「努力するよ」
「5分経ったら話しかけるね」
「了解。……電気消さないでよ」
「分かってるよ」
振りにしては、真剣な顔でムグルに忠告する雄。明らかに前科があるんだろう。
疑いの眼差しを向けながらも、相方の返事を信じて階段を降りていった。
「なぁ。もしかしなくても、アイツ……。ホラーとか、苦手な体質なのか?」
「まぁね。仕事だから、あれでも割りきってくれてる方だけど……。リョーイチの度胸と比べたら、ビビりな性格だよ」
「よく仕事を受けたな」
ましてや東京都内は、戦中のような廃墟と化物が徘徊する状態だ。訳ありだと思うが、リョーイチの質問を受けたムグルの話を聞いて。キョウは、可愛い顔して強い精神の持ち主だと思う。
「もしかして、最初からシュバルツさんが目的で?」
「て言うか、そのシュバルツさんから御指名を受けたんだよ」
「じゃあ何かあるとしたらーー」
ジークの問いに答えたムグルの話を聞いて、胸騒ぎを起こしたコヅキが、先行した雄の安否を気にかける。
「アイツは気付いてんのか?」
「多分ね。でなきゃ、先行しようとしたリョーイチ君を引き留めないはずだよ」
「電気消すな、って言うぐらいですもんね」
雄の怖がりな一面も知っているムグルがリョーイチの問いに応えると、雄の言動から演技にしては出来すぎているとばかりにジークが言った。
「大丈夫かしら?」
「後二三分程、様子見だな」
今のところ、悲鳴も何も聞こえて来ないことから順調なのだろう。心配そうに階段を見下ろすコヅキに、腕時計で時間を確認したキョウが忠告がてら言うと、彼女はその場で耳を澄ませた。
最初のコメントを投稿しよう!