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「多分高層ビルやマンションは、化物に襲われた時、逃げ道が1つしかないから。狙うとしたら一軒家だと思うんだよね」
「そう言えば、報告に上がった現場の殆どが戸建てでしたね」
「雄の読み通りなら、新たな被害者が出る前に何とかなりそうな気はするな」
ジークが報告書の内容を思い出しながら言うと、無闇に探すよりかは計画的な事もあって、キョウは眉を潜めながらも同意した。
「ねぇねぇ、早速現地に向かっちゃう?」
「いや。此処に来る前に一発やらかしてるし、もう少し色々調べて明日に備えるよ。現在地、どこら辺?」
「この辺りですよ」
コヅキの提案に雄が否定すると、マジックボードに張り出された地図を眺めて質問。
そこでジークが指差すと、提案された向かう先の方角を知って、雄の目が厳しくなる。
「__本命がいそうか?」
雄の目付きが変わったことに気が付いたリョーイチが尋ねてみると、呟くように「いる」と肯定した後。我に返ったように「かもしれないね」と付け足した。
そして、そんな雄の発言をフォローするようにムグルが提案する。
「とりあえず、今日の活動はここまでにして。明日、日の出と共に活動しようか」
「そうだね。隠れ家は自由に使って構わないようだし、お腹すいた」
「もう12時過ぎか」
雄の間の抜けた発言にキョウが自前のスマホで時間を確認すると、コヅキがウキウキとした様子で料理上手なキョウに甘える。
「キョウちゃん、食事作って~❤️」
「結構な厨房があったぜ」
「厨房も自由に使っていいよ」
「厨房?」
家庭のよくあるキッチンをイメージしていたが、リョーイチに続いて雄も〈厨房〉と聞いて身体が疼くキョウ。でも今は、あくまで仕事中な訳で__。
「行ってきなよ、キョウ君。気になるなら、リョーイチ君を置いていけばいい訳だし」
ムグルの提案に(それもそうか)と思えるのは、コヅキとジークは家事も料理もこなせる身だが、リョーイチは人並みの生活がままならない程料理も家事も出来ないと知ってるからだ。それに雄の突破的な行動に対応出来た実績もあって、「頼めるか?」とリョーイチに尋ねると、嬉しそうに「任せろ」と拳を上げてきたので肩の荷を下ろした。
「それじゃあ俺とコヅキで、昼飯の用意をしてくる」
「ボクは、マリナさんと本部に連絡するよ」
「あ。シュバルツの話によると、最新報告書は11月28日に送ったらしいよ」
「分かった。確認してみるよ」
厨房へと向かうキョウとコヅキに続いて、ムグルが部屋から退室すると、隣のノートパソコンがあった部屋へと移った。
「それで、雄さんはどうされるんですか?」
「俺? 俺はこのまま、仕事するつもりではいるけど……。ジークは、ヒビキさんに報告とかしないの?」
「雄さんの仕事が一段落してからにします」
愛想は良いが、明らかに相手を疑っている言動に苦笑いを溢す雄。気易く了承することも出来ず、考えた末に率直に質問してみることにする。
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