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「大体此方は、弾切れしないような武器を扱ってる訳じゃねぇんだぞ。出来て明日は様子見だな」
「様子見?」
「新宿駅には、規模は小さいが軍の駐屯所がある。そこで弾の補充を行っての1往復なら、無理なくいけると思うぜ」
つまり現段階では賛成出来ないけど、やりようによっては協力してくれるようだ。
「じゃあそれで」
「数によっては、狩り場を決めてしまった方が良いかもしれないね」
「それなら軍の通り道でもなる、大通りのビル街がいいかもしれない」
「運が良ければ助っ人が来るって寸法か」
しかし、次の日__。
行きしなの戦闘後、弾の補充のために屯所へ立ち寄ってみると、助っ人を期待してはならない程の負傷者に唖然とした。
「リョーイチ君とキョウ君は、弾の補充を兼ねて情報収集してくれないかな? ボク達は駅周辺を偵察してくるよ」
「分かった」
「無茶すんじゃねぇぞ」
化物と一戦交えた後のこともあって、ムグルの要求にキョウが返答すると、リョーイチが忠告して見送った。
「後手に回り過ぎだろ」
「ヒビキのオッサン、何やってんだ?」
LINEによるジークの話だと、場所は違えど同じ新宿区で軍も仕事をしてるはずなのだが……。コヅキの情報によると、新宿区と千代田区の境で交戦中らしい。
「千代田区は、都民すら近付かない危険な場所のはずだが……」
「大方千代田区から溢れだした化物が、新宿に流れて来てんだろ。居住区に達すると、苦情が増えるだけだろうしな」
「だとすると、動ける者は召集をかけられた可能性が高いな」
「聞き込みすっか」
相方の読みを聞いたところで、弾の補充を済ませたリョーイチは、まず顔見知りが残ってないか確認してから初見の軍人から聞き込みを始めた。やはり大規模な戦闘から召集をかけられ、今残っている者達は籠城戦がやっとの負傷者しかいないようだった。
一方駅周辺を偵察すると言って、まんまとリョーイチとキョウから離れる事に成功した雄とムグルは、人目を避けながら新宿の高層ビルへ移動。更にビルの屋上に達したところで、曇り空の下、雄が魔法詠唱を始める。
「黒き大地に 清浄の恵みを
我求めるは鎮魂の儀であり
争いではあらず……。
汝愛し地を汚す者であらず……」
そこでカッと稲光が走った雨雲が渦を巻いて東京都を覆い尽くし、スタンバイ完了と相成ったところで重ねて雄が詠唱する。
「天上に眠りし 天駆ける龍の煌めきよ
我が呼び声で目覚め 汝の鱗に蓄えし
清浄なる雨で 黒き闇を浄化せよ
天龍恵雨!!」
すると、ポツリポツリと雨が降り始め。
本降りになる頃には、リョーイチとキョウが待つ新宿駅に引き上げた。
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