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「もう作戦を決行する場所は決まっているんですか?」
「まぁ一応新宿通りか。甲州街道でやり合う予定ではいるよ」
「新宿通り?」
名前からして、新宿駅の近くだろうと言うのは土地勘のない雄でも分かったものの。眉間にシワを寄せ、(現地集合とか言わないよね?)と訴えかける雄を子供扱いしそうになったヒビキは、(可愛い)と思うぐらいに止めて軽く説明する。
「あ~。要は長期戦を踏まえて、弾の補充がし易い新宿駅周辺の大通りでやり合うつもりでいるんだよ。ポーン狩りを生業にしてた奴が減った事で、地上を出歩いてんのは軍人とならず者ぐらいだしな」
「ならず者?」
「シティで雄ちゃんが追っかけ回してた、パーカー野郎と似たようなもんだよ。善良な都民は避難済みだから、気にしなくても大丈夫だよ」
「さすがですね」
「残る問題としては、君が連れてるリョーイチ達の事なんだけど」
__と、此処で尾行してた三人組を思い出した雄は頭を悩ませた。彼らが大人しく待ってるよいな輩ではない事は、付き合いが短くても何となく分かったからだ。
「彼等は、目を離すとかえって危なそうなので。ムグルと一緒に後方支援に回ってもらおうかなと、考えてます」
「さすが雄ちゃん、分かってるね」
「来る前に下手な尾行してましたので……」
「ジッとしてくれる訳ないか」
「ですね」
それならば、目が届く場所に居てくれた方がマシか。と考え直したヒビキは、先が思いやられるとばかりに溜め息を吐いてから、世話をかける雄に「まぁ明日はよろしくね」と伝えて対談を終了させた。
「あれ? もう終わったんですか?」
「うん。明日は囮として、最前線で戦うから宜しくね」
すると、どうやって話がまとまったのか察したジークが、どこか困った様子で突っ込みを入れる。
「雄さんは揚げ足をとるのがお上手ですね」
「さっきヒビキさんにも言われたよ」
「部屋まで案内しましょうか?」
「大丈夫。それより今日何曜日だっけ?」
「土曜日ですね」
すると、途端にしゅんと凹んだ雄の様子からして、彼の目的が軍人カレーと気付いたジークは助言する。
「今度の金曜はクリスマスですから、特別仕様かもしれませんよ」
「それまでには仕事を終えて、ゆっくり味わって食べるのも有りだな。シュバルツと一緒に」
でもジークは、化物と化した者が人間に戻るとは思えなかったので。複雑な気持ちで雄に問いかける。
「まだ助けるつもりでいるんですか?」
「うん、約束したからね。どんな形になっても、向き合う覚悟は出来てるつもりだよ」
「それは……」
__と、此処でヒビキが執務室から顔を出した事で会話終了。驚きの余り「まだ居たのか」と言ったヒビキに、雄が「すみません」と謝罪した後、駆け出す前に「それじゃ」と軽く別れの挨拶を伝えて去っていった。
「__何か聞いてたのか?」
「大した事じゃありませんよ」
でもジークは、雄が立ち去った後を目で追い掛けた後、約束だからと奮闘する相手に言おうとした言葉を飲み込んだ。
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