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ーー向かうは、少し先の未来ーー
流れる景色が早すぎで七色を通りすぎ、白く瞬き始めた頃。突然馬の気配が消えて、乱雑にぺぺいっと振り落とされた一行が到着したのは、限られた明かりが用意された薄暗い石畳の地下であった。
もっとも移動魔法に慣れているムグルにエスコートされていたコヅキは、石畳で尻餅をつくような痛い思いをするかとなく。華麗にお姫様抱っこされての帰還となったが、他の男性陣の着地は散々である。
それでも「ヒビキさん!」と嬉しそうに駆け寄ってきた一人の男は、「リョーイチ、キョウ、ジークも無事だな? 幽霊とかじゃないよな?」と半泣きで喜びを爆発させる。
「い、イヌカイさんっ!?」
「イヌカイ、ちょっ! 落ち着け!!」
わしゃわしゃとジークの頭を撫でたかと思うと、リョーイチやキョウの頭も撫で。大はしゃぎの部下に、状況把握が追い付いていない上司のヒビキがストップをかける。
しかし、嬉し涙で顔がぐしゃぐしゃのイヌカイを見る限り、相当心配をかけてしまったようなので。ヒビキは怒る気を失せた様子で、一番明るい光が差し込む出入口を見た。
すると逆光な上、明るさに目が慣れてないことから顔は見えなかったが__
「メリー・クリスマス。今宵のサンタクロースは、優秀過ぎて驚いただろ?」
聞き覚えのある声が嫌みったらしく出迎えてくれた上に、立ち上がるタイミングを逃していたヒビキに手を差し述べた。
恐らくシュバルツ仕様上、クリスマスに不似合いな黒い軍馬となってしまったものの。サンタクロースと言えば、赤服。
そこから雄を連想出来たヒビキは、彼が使用した魔法が時空魔法と気付いて。信じられないと思う反面、相手の手を取る前にコメントを返す。
「あぁ、最高のクリスマス・プレゼントだ」
しかし、そのサンタクロースに例えられた雄は、魔力の使い過ぎで顔色が悪くなり__
「雄ちゃん?」
男同士の友情場面に水を差さないよう、ムグルの傍に控えていたコヅキが異変を察して声をかけた次の瞬間。髪色が突然白髪へと変わり、ぐらりと身体のバランスを崩した。
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