34話/報酬はいかほどに?

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「こんちわぁ~」 「精が出ますね」 「おっ、待ってたぜ」  化物(ポーン)が出没するようになった頃から、野外で作業する人は珍しい。おまけに湿布しても隠しきれてない平手打ちの痕跡を目の当たりにしたキョウとリョーイチは、ギョッとした反応を見せた後に質問する。 「ど、どうしたんですか? それ」 「ヒビキのオッサンか?」 「よく分かったな。これでも手加減してもらった方なんだ」  けどヒビキの強さを知る二人は、デコピンで脳震盪を起こした経験から。例え手加減されていたとしても、平手打ちはかなりの威力があったのではないかと推測する。 「喧嘩でもしたんですか?」 「まぁそんなところだ。それより報酬を受け取りに来たんだろ? 案内する」  実際は喧嘩というより、双方相手の事を思い合ってるからこその意見の食い違いのようなものだが……。説明を面倒臭がったシュバルツは、キョウの質問に軽く答えると、ムグルが待つ地下の隠れ家へと導いた。 「御足労をかけたね」 「いや」 「雄の姿が見えないな」 「まだ夢の中だよ」  ホールのソファーに座っていたムグルが挨拶がてらに声をかけると、キョウの返事の後にリョーイチが質問。LINEの既読数が変わらなかった事から予想はしていたが、雄はクリスマスの日から起きてないようだ。 「まぁ座って。報酬は、事前にフレムと相談した金額だから。不満があっても、ひとまず受け取ってくれないかな?」 「苦情は雇い主に直接言え、ってことか」 「道理だな」  しかし、真向かいに座ったリョーイチとキョウに差し出された2つの茶封筒には、予想を反した高額の現金が入っており。結果的に守れたと言い難った二人は、目を丸くして驚いた。 「此方の時給とは別に、時間外加算と危険手当て。案内料含めた金額だよ」 「気を遣った訳じゃなくてか?」 「ヒビキさんのオッサンでも、1回の依頼で支払う金額じゃねぇぞ」 「まぁそれだけ危険なことに巻き込んだ自覚があるってことだよ。ここまでもつれ込むとは思ってもいなかったしね」  ーーと、此処でシュバルツが珈琲を運んできた。外見年齢からすると、ムグルの方が年下のように見えるが、人は見掛けによらないとはこの事だと思う。 「それと迷惑料として、この名刺を差し上げるよ。から貰い受けたんだけど、君達のお陰で使い道がなくてね」  すると目の色を変えたのは、ベガス所属のリョーイチである。 「本物(ほんもん)か?」 「シュバルツが案内出来るはずだから、必要なら頼んでみて」  つまりムグル自身は、地元の人間じゃないことから本物かどうか分からないにしても、シュバルツは知ってるという事だ。
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