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けれど何処の馬の骨も分からない相手に優しくして、リョーイチやキョウの身に何かあったらと不安に思ったジークは、不思議そうに尋ねる。
「その気遣い、必要です?」
「相手の嫌がることは此方もしない。信頼関係を築くための常識だろ?」
「ですが……」
「騙されたら俺達の所為だ。気にするな」
経験上、ジークが何を心配しているのか分かったキョウは、手入れを再開させて言った。普段は気丈に振る舞ってるジークだが、気を許した友人を亡くす不安は慣れそうにないらしい。
一方コヅキは、自身の直感を信じているようで。楽観的に二人の印象を口にする。
「それにしても、不思議な雰囲気の人達だよねー。地方の人達って、皆あんな感じなのかな?」
「どうだかな。とにかく、お前が気に病むこたぁねぇよ。ちょっとした反抗期だと思って、大目に見てくれればいいからよっ♪」
するとジークは、過去を振り替えってジト目でリョーイチに文句を言う。
「何言ってるんですか。何時だって反抗期ですよね? 警報鳴ったのに外に出て仕事するとか。雄さんやムグルさんが助けてくれなかったら、死ぬとこだったんですよ?!」
「お前は悪運だけはあるよな」
「キョウもそんなこと言ってないで、ちょっとは反省して下さい! 僕、本気で心配したんですからね!!」
「すまん💦」
他人事のようにキョウが手入れをしながらリョーイチに言うので、矛先をリョーイチからキョウへと切り替えたジークは、イライラした様子で叱った。情報収集を主に任されているジークは、誰より彼等の安否情報を手に入れられるものの。軍人故に直ぐには手を貸せないのがデメリットである。
そして今度はコヅキが、これよがしにジークに叱られたキョウに提案する。
「罰として、私にティラミス作って!」
「お前にしか得がねぇじゃねぇかよ」
けれどジークが挙手して、「僕も食べます!」と言ってきたので。リョーイチの突っ込みも空しく、キョウは二人のためにティラミスを作る約束をするしかなかった。
「分かった。じゃあ反省の意を込めて、ティラミスは作ってやるから。彼等の連絡先の件は、ヒビキさんには内緒にしてくれ。五月蝿くなるから」
「分かりました。でも、ヒビキさんが思い悩んでるようでしたら、教えて上げてくださいね。シュバルツさんの事を知ってるのは多分、あの二人ぐらいです。ヒビキさんが、このサンシャインを拠点に都民を守るようになってから、何かと手を貸してくれる親友なんで」
「戦友みたいなもんか?」
ヒビキと同じ、シュバルツと面識があるジークが考慮するよう話を持ちかけると、リョーイチが素朴な疑問を投げ掛け。頷いてみせたジークを見て、キョウはヒビキから仕事を受けた当日の様子を思い出す。
「俺達が呼び出された時、深刻そうな顔をしてたのはその所為か」
「ヒビキさんの窮地にフラッと助けにくる人なんですが、余り自分のことを明かさない人なので。結構謎が多い人なんです。ただ前から、フレムさっ……いえ。雄さんが来ると楽しみにされていたので、藁をも掴む思いで探してたんですけど……。仕事が重なって時間が取れなくなったので、やむを得ずリョーイチとキョウにお願いすることにしたんです」
「なるほどな」
「そう言う事なら、俺達も雄とムグルの護衛をしながらシュバルツって人を探せば済むことだ」
「一石二鳥だね♪」
私用の経緯に納得したリョーイチに、キョウが提案をして、コヅキがその話に乗る。
突然見知らぬ人の肩を持ったので、見切りをつけられたんじゃないかと不安に思ってたジークだが、いつものメンバーのやりとりにホッと胸を撫で下ろした。
「それにしても、キョウまで雄さん達の肩を持ってビックリしました」
「悪いな。思うところがあったんだ」
「だろうと思います」
ジークも客人の前であっさり雇用を解消してしまったヒビキのやり方に、少し不満を抱いていた。幾ら大切な存在になったからといって理由も述べず、友人を邪魔者扱いされたようで気分が悪かったのだ。
「正直ジークだけでも、ヒビキさんの味方になってくれてホッとしてるんだ」
「僕は軍人ですからね。私用だからと言って、裏切るような事は出来ません」
「相変わらず固ったくるしいな、お前」
「これぐらい普通ですよ。それにヒビキさんを敵に回したら怖いですからね」
「それは言えてるかも」
キョウの言葉に応えると、リョーイチが突っ込みをしてきたので、ジークは素直に思ってる事を告げ。コヅキは笑って、ジークの気持ちに同意した。
それはサンシャインシティを取り仕切ってる軍人だから、という理由とは別に。底知れぬ実力の持ち主だからである。
「とりあえず不安は解消しましたので、僕は此処でおいとましますね」
「あっ、私も! キョウちゃん、ティラミスよろしくね❤️」
「仕事が一段落したらな」
幾ら勝手に上がり込んでも、此処で寝る気はなかったコヅキは、ジークが立ち去るタイミングでベッドから下りると、部屋から出る前にウインクしてティラミスを請求。
キョウが溜め息混じりに応えると、リョーイチが忠告として「ヒールのあるやつを履いてくんじゃねぇぞ!」と言った頃には、ご機嫌な様子で部屋を出ていった。
「彼女、嬉しそうですね」
「イケメンと仕事出来るからだろ?」
「ルイが可哀想だな」
恐らく彼女の本心は違うだろうがーー。
好き勝手なことをジーク、リョーイチ、キョウの順で発言をした後、くしゃみをしてそうな自称/コヅキの彼氏であるルイを哀れに思うのであった。
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