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「マリナさん、この先は見せたくないモノがあると思いますので……」
「分かっています。主人を……。シュバルツをどうか、お願いします」
遠回しに〈足手まといだ〉と言ってるようなものだったが……。雄に向けて丁寧に一礼したマリナは、感情を圧し殺した微笑みを浮かべると、その場を任せて部屋から退場。
他に言い方があったのではないかと、落ち込む雄にリョーイチが励ましの言葉を贈る。
「良い判断だったと思うぜ。コヅキも部屋を出るなら、今の内なんじゃねぇのか?」
「仲間外れにする気?」
「ちげぇよ」
「リョーイチ君は言い方が悪いんだよ」
「コヅキちゃん。多分カラクリが発動すると、この部屋密室になるよ」
ムグルがリョーイチの欠点を指摘すると、今度は雄が思いがけない事を言って、一瞬その場が静まりかえった。
「ど、どういうことですか?」
「どうもこうも、内側の壁が厚いから。多分外からの侵入者を防ぐために、シャッター的なもんが仕掛けられてると思うよ」
「マジか」
ジークの質問に雄が冷静に答えると、リョーイチがまさかと思いながらも一旦ドアを開けて外枠を確認。するとドアを固定する蝶番とは別に、溝が掘ってあり。ドアを塞ぐように壁が落ちてくる仕掛けになっているようであった。
「それでマリナさんを……」
「コヅキちゃんはどうする?」
「残ります!」
雄の判断に納得した様子のキョウの後に、ムグルが確認をとると、大きく挙手して宣言したところで。リョーイチはドアを閉め、念のため内側から鍵をかけた。
「ほんじゃさっさとカラクリ解いて、次のステージに行くとするか」
「そうだね」
「24冊ありそう?」
「あるんじゃないでしょうか」
「大半が高いとこにあるよね」
「無闇に触らせないようにしてるんだろう」
難なく黒本を回収していくキョウは、此処に幼い子供がいるのではないか。と想像を膨らませながらコヅキのコメントに答えると、次に集まった黒本を番号毎に揃え。同一の番号で仕切りの板を挟むように設置し始めた。
「キョウも気付いたんだね」
「とりは任せた」
「了解」
ーーとは言ったものの。
菱形の中心に当てはめるだけで、果たしてカラクリが動くのか。魔力でスイッチの場所は分かっとも、過る不安から躊躇していると、誰か背後から助言する。
ーー我が心音、此処に有りーー
それも背表紙のタイトル冒頭を指差す、シュバルツの存在に驚いた雄が反射的に振り返ると、彼の姿は何処にもなくーー。
「どうしたんですか?」
「……ごめん、何でもない」
ジークに心配され、苦し紛れに紛れに視線を棚に戻した雄は、シュバルツらしき存在が指差した本のタイトルの冒頭を確認。
そこから正解を導き出した雄は、本を差し込む前に数冊順序を変えーー
「我が秒針此処にあり、て事かな」
空いた場所に、持っていた1冊を雄が納めると、予想通りドアと窓が厚い鉄板で塞がれ。密室と化した部屋に出現したのは、本棚に隠された隠し階段であった。
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