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最終話 ひとつになる
そうさ、今まで小さなスライムにキスしたり、戯れたりしてきたのも、人間の女の子に触れ合うのを見越していたんじゃない。きっとこの日のためだったんだ。
俺は、ニーナに手を埋めた。指先から少しずつ。ひんやりしてぬるぬるしたものが俺の腕を包んでゆく。
(だめよ、ルーカス、来ちゃだめ!)
ニーナは制止したが、俺はもう止まる気はなかった。両腕の次に胴体、両足、そして顔面をニーナに埋める。俺の全身は、身につけていた服と共に、ニーナの中へと入っていった。
これが、好きな女の子の中なのか。俺は素直に性的に興奮を覚えた。温度や感触は人間の女の子とは違うだろう。しかし、好きな女の子と結ばれる幸福感を感じることはできた。
(ルーカス……だめだよ……)
俺の体は、まだ溶けていない。まだ俺は人間のままだ。最初は素直に快感を感じていたが、次第に、孤独に包まれた。
今まで側にいた、スライムたちや、家具や、隣室にいるダンテたちや、外の空気が感じられない。何も見えないし何も聞こえない。それは、想像以上に孤独だった。
ニーナは、こんなに寂しい状況に十年もいたのか。なんて可哀想だったんだろう。
(ルーカス、もう離れないと、死んでしまうわ……)
(いいんだよ。ニーナ。今まで寂しかったね。僕が一緒にいるからね)
俺はニーナから離れなかった。窒息死する瞬間は苦しかったが、こときれてしまうと、ひんやりとした感触に包まれて、幸福でいっぱいだった。
俺の意識がなくなると、ニーナはそっと俺の肉体を取り込んでいった。俺とニーナは、永遠にひとつになったのだ。
俺の連れていたスライム達が、後を追うように大きなスライム――俺とニーナの中に次々と飛び込んできた。
隣の空間にいたダンテが、俺のスペースがやけに静かなのに気がついて、カーテンを開けた。
そこには、ただただ大きなスライムが、静かに存在していた。
おわり
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