第4話 美しきスライム

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第4話 美しきスライム

 ニーナの部屋に入ってからというもの、ずっとスライム達がざわざわしている。大きなスライムの気配がするかららしいが、大きなスライムの姿など見えない。  しかし、このスライム達の騒ぎ方はさすがに無視できない。ニーナのお母さんに断って、しばらく部屋にいさせてもらうことにした。部屋にある家具などを調べたが、特におかしいところはない。  だいぶ暗くなってからも、スライム達が騒ぐので眠ることもできず、そわそわしていたころ、窓辺に大きな影が映った。  引き連れていたスライム達が皆吸い寄せられるように窓辺に近づいていった。あまり見たことがない光景だ。近づいていくということは危険なわけではないのだろうか?少し不安に思いつつも、窓を開けてみる。  窓から、ぬるりと何かが入ってきた。月明かりにぼんやり照らされたそれは、スライムだった。俺と体長が変わらないぐらいの、大きなスライム。今まで見たものの中で、一番の大きさだ。 「な、なんて神々しい!」  俺は感動が止まらなかった。  そのスライムは、見た目はただの透き通った、丸くて大きな物体だ。目も鼻も口もない。  しかし、無駄のない美しい姿だ。そしてその身からは、万物の源である海のような、いや、母の胎内ような包容力、そしてすべてのものを受け入れる月の光のような優しさを放っている。  俺の心に、初恋のようなときめきが走った。
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