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「アンナ、本当に明日、日本に帰っちゃうんだね」
寄宿学校の寮の自室で荷物の整理をしているわたしに、同室のリリィがベッドの中から声を掛けて来た。
「荷造りで、うるさくしてごめんなさい」
「ううん。それはいいんだけど。アンナがいなくなると思うと寂しいな。ねえ?」
リリィが同じく同室のエマに呼びかけた。
ベッドに腰掛けて本を読んでいたエマは顔を上げると、
「ホントにそう」
と頷く。
「アンナがいると、退屈しなくて良かったのに」
「どういう意味?」
「ふふっ、それは……」
エマが笑って答えようとした時、
「アンナ、いる!?」
ノックもせずに同寮のソフィーが飛び込んで来た。どこから走って来たのか、ただならない様子で息を切らせているソフィーを見て、わたしたち三人は驚くというよりも「またか」という顔になる。
「ミリーが中庭で悪魔を呼び出しちゃったの!アンナ、なんとかして!」
「もうっ!何度やらかせば懲りるのよ、ミリーはっ!」
わたしは、怒りながらも立ち上がり、
「ちょっと行って来るわ」
とリリィとエマに声を掛けた。
「私も見に行きたいけど……」
「ダメっていうんでしょう?」
軽く笑ったふたりに、
「絶対ダメ。危ないから!」
わたしはぴしゃりと言うと、ネグリジェ姿のまま、部屋の外に飛び出した。
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