1.大豊神社の狛鳶

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「アンナ、本当に明日、日本に帰っちゃうんだね」  寄宿学校の寮の自室で荷物の整理をしているわたしに、同室のリリィがベッドの中から声を掛けて来た。 「荷造りで、うるさくしてごめんなさい」 「ううん。それはいいんだけど。アンナがいなくなると思うと寂しいな。ねえ?」  リリィが同じく同室のエマに呼びかけた。  ベッドに腰掛けて本を読んでいたエマは顔を上げると、 「ホントにそう」 と頷く。 「アンナがいると、退屈しなくて良かったのに」 「どういう意味?」 「ふふっ、それは……」  エマが笑って答えようとした時、 「アンナ、いる!?」 ノックもせずに同寮のソフィーが飛び込んで来た。どこから走って来たのか、ただならない様子で息を切らせているソフィーを見て、わたしたち三人は驚くというよりも「またか」という顔になる。 「ミリーが中庭で悪魔を呼び出しちゃったの!アンナ、なんとかして!」 「もうっ!何度やらかせば懲りるのよ、ミリーはっ!」  わたしは、怒りながらも立ち上がり、 「ちょっと行って来るわ」 とリリィとエマに声を掛けた。 「私も見に行きたいけど……」 「ダメっていうんでしょう?」  軽く笑ったふたりに、 「絶対ダメ。危ないから!」 わたしはぴしゃりと言うと、ネグリジェ姿のまま、部屋の外に飛び出した。
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