1.大豊神社の狛鳶

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 ソフィーに案内されて中庭へと急ぐ。  こんな深夜に寮の外に出るなんて、寮監に見つかったら、きっと怒られてしまう。  わたしとソフィーはこっそりと外に出ると、中庭に向かった。すると、 「キャアアッ!イヤッ、こっちにこないで!!」 「誰か、助けて!」 と叫ぶふたりの少女の声が聞こえて来た。  急いで駆けつけてみると、ソフィーと同室のミリーとレイラが抱き合って地面に座り込んでいる。地面の上にはチョークで魔法陣が描かれており、その中に、黒い羽と角を持つ異形の化け物が浮かんでいた。  今にもふたりを捕まえて、地獄に引きずり込んでしまいそうなその姿を見て、 「ヘルハウンド!あいつを止めて!」 わたしは急いで叫んだ。  すると、どこからともなく黒い犬が現れ、わたしの横を駆け抜けて行くと、魔法陣の中の悪魔の腕に噛みついた。呻き声をあげて悪魔が怯んだ隙に、わたしはミリーとレイラを庇うように立ち塞がると、右手の人差し指と中指を立て刀印を結び、 「『朱雀 玄武 白虎 勾陣 南斗 北斗 三台 玉女 青龍』」 縦と横に九度指を動かし、九字を切った。そして、 「滅しなさい!」 と叫ぶ。すると、この世のものとは思えない叫び声を上げた後、悪魔の姿がわたしたちの目の前から掻き消えた。 「ふぅ」  ほっとして吐息すると、ヘルハウンドがわたしの元に戻って来て、「褒めて」というように尻尾を振った。「よしよし」とその頭を撫でてやっていると、 「わあぁぁん!アンナ、ありがとう~~~っ!」 「助かったぁぁ!さすが、ジャパニーズエクソシスト!」 ミリーとレイラがわたしの背中に飛びついて来た。  「もうっ!ふたりとも、懲りないわね!小物だったから良かったものの、大物が出て来たらどうするつもりだったのよ」  わたしは振り返ると、まなじりを吊り上げてふたりを見た。
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