2.北野天満宮のお牛さん

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 今出川通を西へ向かって真っすぐに進むと、京都御所を左に見ながら通り過ぎ、さらに進んで堀川通という大きな道に出た。 「堀川通や。陰陽師にとっては、ゆかりのある場所やね」  颯手の言葉に、 「どうして?」 と首を傾げて問いかけると、 「もう少し南に行くと、平安時代の陰陽師、安倍晴明の屋敷跡に建てられたって言われている晴明神社があるねん。晴明が式神を隠していた一条戻り橋の下は、堀川っていう川やし」 と教えてくれる。 「ふぅん……このあたりにそんな神社があるんだ」  陰陽師は呪法で不思議な技を使っていたという印象が強いが、もともとは陰陽寮という組織に属していた役人だ。陰陽寮では、天体の観察や暦の作製、時刻の管理、吉凶占い、儀式等を行っていたのだが、平安時代中期になり、呪法の専門家としても活躍するようになった。長い歴史の中で、安倍家だけではなく他の陰陽師もいただろうから、自分の直接の先祖が晴明だったとは思わないが、わたしはなんだか親近感を覚えた。 「前は落ち着いた小さな神社やったんやけど、陰陽師ブームで有名になって、今は賑わっているみたいやで」
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