1109人が本棚に入れています
本棚に追加
「北門から外に出て、『一の鳥居』まで戻ろか」
門の外に出ると、食べ物の屋台が多かった参道に比べて、物販のお店がずらりと並んでいる。タープテントを立てているお店も多く、色鮮やかな着物や絢爛豪華な帯が吊り下げられているお店や、陶器、木工製品、一見何か分からない謎の骨董品等が雑然と置かれているお店など様々だった。
「これ何だろう?ビン……?」
わたしがワイヤーラックの中に並べられているビンを眺めていると、
「牛乳瓶やね。懐かしいわ」
颯手が一本取り上げて見て、目を細めた。
「でも、何に使うんやろ?」
「花瓶とかにしたらええんと違う?」
颯手のつぶやきを耳に留めた男性が話しかけて来た。てっきりお店の人かと思ったら、
「おっちゃん、これ貰うわ」
と言って、仏像を差し出している。
「まいど」
店主らしき初老の男性が、にこやかにお金を受け取っているのを見ながら、わたしには価値の良く分からない物も、人にとってはお宝なのだろうな、と思った。
最初のコメントを投稿しよう!