2.北野天満宮のお牛さん

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 ぶらぶらと露天を冷やかしながら歩いていると、アクセサリーをたくさん置いているお店を見つけ、わたしは近づいて中に入ってみた。テントの中には所狭しとイヤリングやブローチが並べられていて、 「これ可愛い!」 サクランボの形のブローチに見入っていると、 「1960年代から70年代のアメリカのアクセサリーだよ。ゆっくり見て行ってね」 と店主に声を掛けられた。  言われてみると、どれもややレトロなデザインで、現代の物とは違う雰囲気がある。 (これ、いくらぐらいするんだろう?)  ブローチをそっと手に取って値段を見てみたら、思っていたより高かったので、 (今日、ママからもらったおこづかいでは、買えないわ……) わたしは肩を落として元の場所に戻した。  「ありがとうございました」と店主にお礼を言い、テントを出て、 (颯手と愛莉はどこを見ているんだろう?) きょろきょろと周囲を見回した。すると、 「いない……」 いくら見回してみてもふたりの姿が見つからず、わたしはさあっと青くなった。 (もしかして、わたし、迷子になってしまったの!?) 「どうしよう。ここがどこだか分からない」  おろおろしながらも、とりあえず神社の外周沿いに進めば、『一の鳥居』に戻れるのではないかと思い、歩き出す。すると、 (ん?) わたしは目の前に、妙な格好をした老人がいることに気が付いて、瞬きをした。  その老人は背が低く小柄で、平安時代の装束のような古めかしいデザインの着物を着ている。顔は皺くちゃで、どこに目鼻があるのかよく分からない。老人は露店を眺めては、「ふむふむ、ここにも無いのぅ」とつぶやきながら、次の露天、次の露天とへ回っている。
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