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ぶらぶらと露天を冷やかしながら歩いていると、アクセサリーをたくさん置いているお店を見つけ、わたしは近づいて中に入ってみた。テントの中には所狭しとイヤリングやブローチが並べられていて、
「これ可愛い!」
サクランボの形のブローチに見入っていると、
「1960年代から70年代のアメリカのアクセサリーだよ。ゆっくり見て行ってね」
と店主に声を掛けられた。
言われてみると、どれもややレトロなデザインで、現代の物とは違う雰囲気がある。
(これ、いくらぐらいするんだろう?)
ブローチをそっと手に取って値段を見てみたら、思っていたより高かったので、
(今日、ママからもらったおこづかいでは、買えないわ……)
わたしは肩を落として元の場所に戻した。
「ありがとうございました」と店主にお礼を言い、テントを出て、
(颯手と愛莉はどこを見ているんだろう?)
きょろきょろと周囲を見回した。すると、
「いない……」
いくら見回してみてもふたりの姿が見つからず、わたしはさあっと青くなった。
(もしかして、わたし、迷子になってしまったの!?)
「どうしよう。ここがどこだか分からない」
おろおろしながらも、とりあえず神社の外周沿いに進めば、『一の鳥居』に戻れるのではないかと思い、歩き出す。すると、
(ん?)
わたしは目の前に、妙な格好をした老人がいることに気が付いて、瞬きをした。
その老人は背が低く小柄で、平安時代の装束のような古めかしいデザインの着物を着ている。顔は皺くちゃで、どこに目鼻があるのかよく分からない。老人は露店を眺めては、「ふむふむ、ここにも無いのぅ」とつぶやきながら、次の露天、次の露天とへ回っている。
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