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かなり目立つ老人なのに、誰も気に留めている様子がなかったので、不思議に思って見つめていると、わたしの視線に気が付いたのか、老人は、
「おや?おぬし、儂が見えるのかの?」
と言って、こちらを振り向いた。
「ふむふむ、さてはおぬし、先程牛舎で、一願じゃというのにふたつ願い事をした欲張りな女子(おなご)じゃな」
老人はわたしの側に近づいて来ると、そう言って、わたしの顔を見上げた。皴が動き、目尻が下がる。どうやら笑ったようだ。
「えっ!?」
一瞬、意味が分からず目を瞬くと、
「おぬし、絵馬と牛に、違う願い事をしたじゃろ?」
と聞かれる。どうしてこの老人がそれを知っているのだろうと驚き、
「あなたは誰なんですか?どうして、わたしがふたつお願い事をしたって知っているの?」
(颯手と愛莉にも言っていないのに)
と問いかけると、
「それは、儂が『一願成就のお牛さん』だからじゃよ」
老人は、「ふぉっふぉっふぉっ」と笑い声をあげた。
(お牛さん……あっ、そうか!この人も、大豊神社の狛鳶と同じ、神使なんだわ)
わたしはそこでようやくピンと来た。
(だから、他の人には姿が見えないんだわ)
納得していると、
「欲張りな女子よ。儂の探し物を一緒に探してくれんかの?」
お牛さんはわたしにそう頼んで来た。
「探し物って、なぁに?」
神使のお願い事を断るのも気が引けて、問い返すと、
「箱じゃ」
お牛さんは探し物の説明を始めた。
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