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コインパーキングまで戻ると、愛莉が車のそばで待っていて、わたしの顔を見るなり、
「ああ、良かった!」
と笑顔になった。
「愛莉、心配かけてごめんなさい」
愛莉もきっと颯手と同じぐらい心配してくれたのだろう。頭を下げると、
「ううん。人が多かったもんね。私こそ、お店に夢中で、杏奈ちゃんを見失ってごめんなさい」
逆に愛莉に謝られてしまった。
「ううん!わたしがひとりで勝手にうろうろしていたから……」
「私こそ、ぼんやりしていて……」
「ふたりとも、もうええで」
謝り合戦をしているわたしたちを見て、颯手がぷっと噴き出した。
「駐車料金払ってくるから、先に車に乗っとき」
そう言って車のカギを開けると、料金メーターのところへと歩いて行く。
わたしと愛莉は後部座席の扉を開けると、ふたり並んで腰掛けた。
愛莉がビニール袋を提げていることに気が付き、
「何か買ったの?」
と問いかけると、
「うん。ちょっと素敵な物を見つけたの」
愛莉は、ふふっと笑って袋の中から箱のようなものを取り出した。それを見た途端、
「これっ……!」
わたしは目を見開いた。
黒い漆塗りの箱の蓋には、螺鈿細工で桜の花が描かれている。蓋は蝶番で本体と留められており、外れて落ちないようになっていた。
「この宝石箱、可愛いでしょう?オルゴールみたいなんだけど、壊れているみたいで鳴らなくて……」
そう言って箱の蓋を開けようとした愛莉に、
「それ、見せて!」
わたしは両手を差し出した。
「いいよ」
愛莉は蓋を開けるのを止め、わたしに箱を手渡してくれる。
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