2.北野天満宮のお牛さん

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 わたしは箱を持って回して見た。箱の側面にも桜の花びらが描かれており、どこから見ても綺麗な細工だ。裏側にオルゴールのつまみがあったので回して、蓋を開けてみたが、愛莉の言うように壊れているのか、音が鳴らない。 (箱っていうか……オルゴールだけど、お牛さんが探していたのって、この箱なのかな?)  もしそうなら、見つけたことを教えてあげたい。 (でも、これは愛莉が買ったものだし……)  どうしようと思っていると、 「お待たせ」 駐車料金を払った颯手が車に戻って来て、扉を開けた。運転席へ乗り込み、 「ほんなら帰ろか」 と言って、エンジンをかける。 「あっ、ちょっと待って……」 (やっぱりお牛さんに一言言ってから……)  慌てて颯手を止めようと身を乗り出したら、わたしは手を滑らせて、足下にオルゴールを落としてしまった。 「あっ!ごめんなさい!」 「大丈夫だよ」  愛莉が身を屈めオルゴールを拾い上げる。すると箱の中から、ポロン、と音が鳴った。 「あれっ?」  首を傾げて愛莉が蓋を開けると、まるで元から壊れていなかったかのように、オルゴールが音楽を奏でだした。 (わたしが落としたはずみで直った……とか?)  音が鳴らなかったのは、シリンダーに何か引っかかっていたのだろうかと思い、 「そのオルゴール、もしかして直ったのかな?」 と言って愛莉を見ると、愛莉は真っ青な顔で唇を噛み、小刻みに震えていた。
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