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愛莉のアパートに到着すると、颯手は車を停め、後部座席の扉を開けて、眠っている愛莉の体を抱き上げた。
「かんにん、杏奈。愛莉さんのバッグ持って、ついて来てくれへん?」
「うん。分かった」
愛莉のバッグとオルゴールの箱を持ち、車から降りると、颯手の後について、アパートの階段を上る。
颯手は愛莉の部屋には行かず、手前の誉の部屋の前で立ち止まると、玄関扉をノックした。少しの間があり、内側からガチャリと扉が開く。
「颯手か。どうしたんだ?」
誉が顔を出し、
「――愛莉!?」
ぐったりした様子で颯手に抱かれている愛莉を見て、目を見開いた。
「悪い、誉。僕がついてたのに……」
「何があった?」
いつも鋭い誉の眼差しが、さらに鋭くなり、颯手を見つめる。
颯手は愛莉の体を抱く手に力を籠めると、
「……説明するし、中に入れて」
と低い声で言った。
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